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「イスラム国」台頭 事態打開のカギは?

2014年12月29日 13:20

 今年、中東のイラクやシリアで勢力を拡大し、世界にとって新たな脅威となったイスラム過激派組織「イスラム国」。アメリカなどによる掃討作戦が長期戦の様相も見せる中、2015年、事態打開のカギはどこにあるのか、エジプト・カイロから天野英明記者が報告する。

 今年10月、NNNの取材に応じたのは、「イスラム国」の戦闘員だったというシリア人の男性。その実態について「シリア人は月給400ドル、外国人は月給800ドルが支払われていた」「外国人には『イスラム国』の支配地域の女性が与えられ、結婚できるのだ」と証言していた。

 石油の密売などで得た豊富な資金と、外国から合流する戦闘員の存在を大きな原動力として勢力を広げてきた「イスラム国」。イラクやシリアの一部を支配地域に収めている。

 「イスラム国」に対し、アメリカなどの有志連合は8月にイラクで、9月にシリアで、それぞれ空爆を開始。ただアメリカは、その戦況は長期化するとの見通しを示している。

 対「イスラム国」統合任務部隊・テリー司令官(米国防総省)「イラク国内での(『イスラム国』を抑え込む)能力構築には少なくとも3年かかるだろう」

 事態打開のカギはどこにあるのか。専門家は、「イスラム国」の弱体化には資金源の根絶が最も重要だと指摘する。

 笹川平和財団・佐々木良昭特別研究員「そもそも『イスラム国』というのはインターネットやFacebookで集めた有象無象の集団。大半は金もうけというか出稼ぎ気分で来ている。そうすると、資金的に問題が発生したら瓦解(がかい)するだろう」

 資金源を断つことで、戦闘員への給料の支払いや食糧の配給が滞れば、一気に内部分裂を引き起こす可能性があるという。実際、関係諸国はその資金源根絶に向けすでに動き出している。

 アメリカなどは、「イスラム国」が支配する製油施設などを重点的に空爆。また、イラク最大の製油所を擁する街、北部のバイジはイラク軍が11月、「イスラム国」から奪還したと伝えられている。さらに今月初めには世界60か国の外相らが集まり、「イスラム国」の資金源を絶やすことなどについて取り組みを深めることを確認。石油の密売などは取り締まりが強化されている。

 佐々木氏は、こうした成果が徐々に出始めていると見ている。「最初のうちはシリア軍にしろ、イラク軍にしろ、軍人を捕まえて処刑をしていた。だんだん処刑の対象が部族の構成員であるとか、女・子供に変わっていった。もう正規の軍隊と真正面から戦闘をして、絶対的な優位を確保することができない。弱体化の兆しだろうと思う」

 今月22日、イギリスの新聞「フィナンシャル・タイムズ」は、シリアのラッカから逃亡を試みた「イスラム国」の外国人戦闘員100人が処刑されたと伝えた。一部の戦闘員の間では組織への不満が顕在化し、内部分裂が始まっている可能性がある。

 空爆だけでは「イスラム国」壊滅には至らず、手詰まり感も出始める中、今後は資金源を絶つといった内部から組織を崩す戦略がカギとなりそうだ。