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パリで体験を語った被災地の高校生

2014年9月13日 19:59
パリで体験を語った被災地の高校生

 8月下旬、東日本大震災の被災地の高校生がフランス・パリで東北の復興と魅力をアピールした。そこには、自ら被災した体験を「伝える」高校生の姿があった。

 夏目裕大さん「(震災を経験して)自分の無力さを感じました」

 長沼克宝さん「原発についていまさら良いのか、悪いのか、言う気はありません」

 2人は福島第一原発がある福島県大熊町で暮らしていたが、小学校卒業間際に被災した。そして、避難生活をしている中で、今回のプロジェクトと出会った。これはOECD(=経済協力開発機構)が「教育から復興」を掲げ、東日本大震災から地域復興の担い手を育てようというもの。そのプロジェクトのゴールとなるのが、今回のパリで行われたイベントだ。

 プロジェクトではメンバー自らがテーマを設定。彼らは自らの体験を「伝える」ことを選び、2年半取り組んだ。メンバーのほとんどが多感な時期に震災や原発事故、それに伴う避難生活を経ている。そのため、その経験などに口を閉ざすことも少なくないという。

 長沼克宝さんは「本当の姿」を知ってもらおうと、プロジェクトではセルフドキュメンタリーの制作を手掛けた。初めての作業に戸惑いながらも挑む。

 長沼さん「小さい頃から何度も行ったことがある原発はとても近代的で、この施設が関東一帯の電気を作り出していることに誇りを感じていました。あの時までは…」

 また、夏目裕太さんは避難生活が続く中、初めは「パリに行ける」という漠然とした気持ちでこのプロジェクトに参加した。

 プロジェクトの活動を支え、中学時代の2人に英語を教えた畑中豊さんは「段取りとか体裁ではなく、自分が伝えたいことを本気で伝えてほしいというだけですよ」と語る。震災、原発事故による死と再生を世界にどのように伝えるのか。

 夏目裕大さん「いつか世界中からの支援に対して恩返しをしたい。(そのためにも)私は強く生きています」

 「語り」を聞いた人は「彼らが経験したこと全てを見せることは、とても勇気が必要だったと思います」と語った。

 彼らは震災や福島第一原発事故の経験に口を閉ざすことなく世界に伝え続けた。誰もそのような経験をしないために。