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中国・北京 五輪大会後の施設をどう活用?

2014年9月5日 16:41
中国・北京 五輪大会後の施設をどう活用?

 2022年の冬のオリンピック開催地に再び名乗りを上げた中国・北京。オリンピックの施設を大会後、どのように有効活用するか。その取り組みを原田敦史記者が取材した。

 8月、私たちが訪れたのは北京国家体育場、通称“鳥の巣”。観客9万1000人を収容できる世界でも屈指の巨大スタジアムだ。“鳥の巣”の地上部分には、2008年の北京オリンピック当時に使われた陸上競技のトラックがそのまま残されている。その内側では、前日にあったコンサートの会場の片付けが行われていた。

 北京オリンピックの後、“鳥の巣”は管理が民間に委託され、スポーツの大会以外にもコンサートなど大型のイベント会場として150回以上利用されている。イベント1回当たりのレンタル費用は約5000万円。イベントが行われていないときも、観光客は1人約800円の入場料を払って見学でき、これまでに2300万人が訪れたという。今年4月には、東京都の舛添知事が北京を訪問。2020年の東京オリンピックを控え、大会後のスタジアムの利用方法について“鳥の巣”などを視察した。舛添知事は「オリンピック東京大会を準備するにあたって、後利用ということで、北京のそういう経験から学べることがあればということで、今後とも連絡をとりましょうと説明を受けた」と語る。

 今年、北京市は、隣接する河北省張家口市と共に2022年の冬のオリンピック候補地として立候補。ノルウェーのオスロ、カザフスタンのアルマトイと共に最終候補地に選ばれた。北京オリンピック都市発展促進会の蒋効愚会長は、会見で施設の長期的な活用について語っていた。

 「北京は張家口と合同で2022年オリンピック冬季大会に立候補した。スタジアムの長期的な運営・利用にとっても、客観的に有利な要素だ」

 今後、招致活動が本格化するのを前に、国内外の記者らを施設に案内。2008年に作られた施設が大会後も有効に活用されていることをアピールした。冬のオリンピックでは開幕式を“鳥の巣”で行い、競泳会場だった“水立方”をカーリングの競技場に改修するなど、多くの施設の再利用を検討している。

 北京オリンピックの施設の大会後の利用で、最も成功しているとされるのがバスケットボールの会場だ。週末にはバスケットボールのイベントが開かれ、NBA選手のスポーツ学校も併設されるなど関連施設が集積。競技会場自体は、大手クレジットカード会社が命名権を買い取り、コンサートなどの会場として使われ、利用率は70%を超えている。ただ、それでも年間8億円以上の維持費などは、施設を所有する会社が補填しなければ回らないという。施設の運営会社の王淑侠社長に「東京へのアドバイス」を尋ねたところ、こう返答された。

 「我々こそ同業者の経験を拝借したい。投資が大きすぎるので、イベント収入だけで回収するのは非常に難しい」

 さらに、北京オリンピックのために作られた野球場を訪ねると、野球場はすでに取り壊されていた。今は駐車場の建設工事が進められているが、まだ途中のままだ。もともとオリンピック後に地下駐車場として再開発されることが決まっていたものの、ようやく2年前に工事が始まったばかりだ。

 冬のオリンピックが開かれれば、世界で唯一、夏と冬両方の大会が開かれた都市になる北京。ただ、このプレスツアーが行われた日も、日本の環境基準の4倍を超えるPM2.5が市内を覆うなど、依然として大気汚染は深刻だ。食の安全問題を懸念する声もある。

 今後、懸念を払拭し、魅力的な招致プランを提案できるのか。来年7月の最終選考に向け招致活動が本格化する。