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2重帳簿も?検査すり抜ける食肉工場の実態

2014年7月24日 0:50

 中国の食品加工会社が期限切れの食肉を出荷していたとされる問題。取引先のマクドナルドは外部の機関に委託し、工場について査察を行っていたが、それにもかかわらず、問題を見抜くことができなかった。そのわけとは?

 期限切れの食品を出荷していたとされる「上海福喜食品」。地元の公安当局も捜査に乗り出し、23日、会社の責任者5人を拘束した。

 問題の発端となったのは、中国・上海のテレビ局の潜入映像。従業員が、床に落ちたミンチを拾って再び機械に戻したり、丸い形の肉も床から拾い上げてそのまま使用。さらに、落ちたナゲットもそのまま投げ入れた。青みがかっているように見える肉については―。

 従業員「肉が色が青く変色している」「腐った肉だ」

 この工場は、鶏肉や牛肉の使用期限を改ざんし、出荷した疑惑がもたれている。

 記者「使用期限が過ぎていましたよね?」
 従業員「期限過ぎたものを食べても死ぬことはありません」

 また夜になると、箱から肉を取り出す従業員の姿が。

 従業員「この牛肉は使用期限を迎えるので、箱から出しました」

 使用期限の日付を張り替えるための作業だという。放送によれば、使用期限が過ぎた肉を細かくし、チキンナゲットにしていたという。

 会社への調査に品質部の責任者は―。

 上海福喜食品・品質部のマネジャー「(Q:不良品肉の再利用は誰の指示でやったのか?)少なくとも工場長より上の人でしょう」

 上海市薬品食品監督管理局「これは個人の犯罪ではなく、会社が主導した組織的な違法行為だ」

 上海市当局は、偽装が数年にわたって組織ぐるみで行われていたとの見方を示した。

 再び上海のテレビ局の映像。リポーターが指をさした先には、「日本マクドナルドのチキン」「劣等品を混ぜた」の文字があった。

 この会社から「鶏肉加工品」を輸入していたのは日本マクドナルドとファミリーマート。その量は厚生労働省によると、この1年で実に約6000トンにのぼったという。

 23日、ファミリーマートの社長が取材に応じた。

 ファミリーマート・中山勇社長「ちゃんとしたものを使っていますよと言って、ちゃんとしたものを使っていなかったというのが今回の出来事。私どもは国内でお客様の信頼を裏切っているということで、大変申し訳なく思っております」

 問題の会社へのチェックはどのように行っていたのだろうか。実はマクドナルドとファミリーマートは問題の会社がHACCP(ハサップ)という衛生管理手法を導入している点を重視していた。現在、国際的にも標準的な手法になっているHACCP。一体、どのようなものなのか?

 ZEROは23日、HACCPを導入している群馬・高崎市の食肉工場「株式会社オルビス」を訪ねた。まず検査は原料の搬入段階から始まった。

 株式会社オルビス・島方啓専務「今、原料が入ったところで、これから原料検査を」

 こちらは、ローストビーフにされる牛肉。使用期限は当然のこと、肉の表面温度などが確認されるという。検査は肉の加熱段階にも。見ているのは温度計だ。基準にしている温度や時間で加熱されているのか確認しているのだ。

 株式会社オルビス・島方啓専務「加熱しすぎれば安全性は高くなるが、弱いほどおいしさはある。そこのきわをやるのが製品作りの一番の要。ただ、安全性は担保できないといけませんので、こういった確認作業が非常に大切」

 HACCPではこのように製造の各段階でその都度、適切な作業がされているか確認するのだ。そのため、従来は主流だった出来上がった製品の一部を抜き取って確認する手法より信頼性が高いとされている。

 さらに、マクドナルドでは上海の食品加工会社に対し、年に1回査察を行っていた。それにもかかわらず、見抜けなかったのはなぜなのか。そのカギは、上海のテレビ局が放送した特別番組にあった。

 今年5月21日に撮影したという映像には、マクドナルドによる工場への査察の様子が映っていた。ところが査察が終わると、従業員たちはどこからか青い袋をもってくる。実はこの中身は、不良品。これを正規の商品と混ぜて出荷するのだという。

 記者「もし、マクドナルドにばれたら?」
 従業員「彼らが知ったら、もちろん(不良品を)混ぜるのを許さない。それでも混ぜたら注文がキャンセルされるだろう」

 また上海のテレビ局は、問題の会社は、内部用と外部用の2つの帳簿を作っていたと伝えている。こうして査察のたびにごまかしてきたのだろうか。