×

W杯でコロンビア躍進 背景には治安改善も

2014年7月4日 16:46
W杯でコロンビア躍進 背景には治安改善も

 「2014 FIFA ワールドカップ」で、日本とも対戦したコロンビア。世界でも治安が悪い国のひとつともいわれる状況を改善するためにサッカーも一役買っているようだ。杉山亮記者が取材した。

 サッカーワールドカップで、日本に圧勝して決勝トーナメントに進んだ南米コロンビア。コロンビアでサッカーは、大人気のスポーツだ。街のあちこちでボールを追いかける子供たちの姿を見ることができる。政府が貧困地域に配った、黄色と緑のユニホームを着てサッカーをする子供たち。しかし、グランドはボコボコで気をつけないと転んでしまいそうだ。

 16年ぶりのワールドカップ出場。強豪復活の背景にあるのが、国内の貧困対策、そして、その結果生まれた治安の改善だ。麻薬密売や殺人、誘拐など、凶悪事件が多発し、世界の中でも治安の悪い国のひとつであるコロンビア。貧困が犯罪を生む“負の連鎖”が続いていた。

 そんな中、この国に変化をもたらしているのが、美しさを競うコンテスト。カリブ海沿岸の街でずらりと並んだ女性たち―主催したのは市役所だ。

 500人の応募の中から第3位に選ばれたイボンヌさん、23歳。イボンヌさんは、このコンテストがきっかけで人生が変わったという。実家は、この町でも最も治安が悪いと言われる貧困街にある。イボンヌさんのお母さんが我々を迎えてくれた。キッチンに立つイボンヌさんの母親はこう語る。

 「これらは娘が買ってくれました」「この冷蔵庫もです」

 部屋には、イボンヌさんを取り上げた記事や写真などがスクラップして張ってあった。その中のひとつには、住民に囲まれたイボンヌさんの写真とともに、「この町の“女王”」という見出しが躍る。

 イボンヌさんの母「コンテストで賞をとってから娘の人生が変わりました」「彼女にとってもプラスになったほか、子供たちも助けるようになったんです」

 イボンヌさんは、近所の子供たちに夢を与えたいと、コンテストで得た賞金で貧困街の支援を始めた。

 赤ちゃんを抱いた女性住民「イボンヌのことは全部好き。地域に貢献してくれるもの」

 別の女性住民「いつか私もイボンヌのようにコンテストに出たいわ」

 市役所のコンテスト担当者「コンテストに出たい子は、よく勉強して準備しています」

 コンテストを目標に子供たちが貧困に負けず夢や希望を持つこと、これが重要だという。

 イボンヌさん「地元の子供らの支援をしています。子供たちのために情熱を注いでいきたい」

 首都・ボゴタとその周辺では、貧困地域に住む人は850万人にも及ぶ。電気がなく、一日一食しか食べられない子供が多いのも現状だ。

 山の斜面を切り開いた小さなグランドでは、慈善団体による無料のサッカー教室が開かれていた。これも治安の改善をめざした取り組みのひとつだ。約1200人の子供が通うこの教室では、週5回の練習が行われている。教室に通うことで、規則正しい生活を送り、“非行に走る子供”を減らすのが目標だ。

 生徒たち「将来の夢はプロのサッカー選手」「コロンビアで一番のゴールキーパーになりたい」

 さらに、子供たちが街に出てサッカーができるようになった理由には、日本の「あるもの」が役立っていた。コロンビアのいたるところで見ることができるコンパクトな警察施設。実は、日本の交番を参考にしたものだという。警察と市民を近づける“コロンビア版の交番”は、犯罪の抑止力としての効果も絶大だ。

 治安が改善したことで、国民のサッカーへの興味や関心が再び盛り上がってきたというコロンビア。街を歩く多くの子供たちが代表のユニホームを着ていることが、サッカー人気復活のひとつの証とも言えそうだ。