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世界でたった1機!“飛べるゼロ戦”を取材

2014年5月16日 16:09
世界でたった1機!“飛べるゼロ戦”を取材

 アメリカ・ロサンゼルス近郊にある博物館に、世界でここにしかないという貴重な日本製の戦闘機「ゼロ戦」が展示してあるという。加藤高太郎記者が取材した。

 ロサンゼルスから車で1時間半の場所に、昔の軍用機ばかりを展示する民間の航空博物館がある。第2次世界大戦前後の機体を中心に150機以上が保有されている。この博物館のこだわりは、展示するだけでなく、可能な限り修復して飛行させること。現在50機以上が飛行可能だという。

 毎年開かれる航空ショーでは、世界中から集められた古い戦闘機がつくられた当時のように飛ぶ姿を披露する。

 珍しい機体がそろうこの博物館の中でも特に貴重とされ、世界にここにしかないとされるのが旧日本軍の戦闘機「ゼロ戦」だ。この日は整備のため、大きく3つに分かれた状態で保管されていた。

 エンジンも製造当時のもの。オリジナルのエンジンで飛行できるゼロ戦は日本にも残っておらず、この機体が世界でただひとつとされている。もともとこの機体は、戦時中にアメリカ軍がサイパンの空港を占領した際に無傷で収用したもの。戦後、この博物館が引き取り、飛行できる状態を保ってきた。

 パイロットでもあり、整備も担当するジョニー・マロニーさんに話を聞いてみた。

 ジョニーさん「整備は大変ですが、みんなが機体を見て、その音やにおいなどを記憶にとどめることは素晴らしいことです」

 特攻隊員としての道を選んだゼロ戦パイロットを描いた映画「永遠の0」。去年、ゼロ戦が登場する映画がヒットを記録し、ゼロ戦への関心が高まった。

 その日本に、アメリカの博物館からゼロ戦が輸送され、おととしから去年にかけて埼玉・所沢市の記念館で特別公開された。飛ぶ機会はなかったものの、エンジンを回すイベントに集まった多くの航空ファンが当時と同じ音に熱心に耳を傾けた。

 大きな反響を呼んだ日本での公開を終え、アメリカに戻ったゼロ戦。今年の年末に予定されるイベントで飛行する姿を披露するため、整備を受けている。外側の装甲部分を叩いてみると「トントン」という軽い音がする。とても薄い印象だ。エンジンのパワー不足を補うため、防弾性能を犠牲にしてまで軽量化を目指したゼロ戦。その機体は歴史を静かに伝え続けている。

 この博物館の裏にある空き地には、世界各地から集められ、整備を待つ古い軍用機が並んでいる。限られたスタッフと予算の中だが、可能な限り修復して、再び飛行させたいとしている。

 ジョニー・マロニーさんは、博物館の意義について「それは歴史を保護することです。ここの飛行機は重要な発明であり、次の世代のために保存しています」と話す。そして、ゼロ戦を操縦した印象についてはこう語ってくれた。

 「同じ時代の他の飛行機に比べて、動きが機敏で驚いた」