×

新防衛大綱、中国念頭“離島を守る”に重点

2013年12月11日 20:16
新防衛大綱、中国念頭“離島を守る”に重点

 安倍政権は、安全保障政策の指針となる新たな防衛大綱をとりまとめ、その全容が判明した。3年前の民主党政権の時の大綱と比べ、中国を念頭にした離島防衛や北朝鮮の弾道ミサイル対処能力の強化に、より重点を置く内容となっている。

 安倍首相「新たな防衛計画大綱は、今後の我が国の安全保障の有り様を決定する歴史的な文書となると確信しています」

 政府は、約10年間の安全保障政策の指針となる新たな防衛大綱を取りまとめた。日本テレビは、新たな防衛大綱と今後5年間の自衛隊の装備計画を記した中期防衛力整備計画の全文を入手した。中国を念頭にした離島防衛や北朝鮮の弾道ミサイル対処能力の強化に、より重点を置く内容となっている。

 日本の防空識別圏と重ねて、先月、中国が設定した防空識別圏。この中には、沖縄県の尖閣諸島上空も含まれている。尖閣諸島周辺の上空や海域に、たびたび侵入を繰り返す中国。今回の防衛大綱では、離島への侵攻に備えて「本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備する」と明記されている。

 アメリカ・サンクレメンテ島で今年6月に自衛隊とアメリカ軍が合同で行った離島防衛・奪還訓練でも、新たな部隊設置を視野に入れた訓練が展開されていた。この部隊は、アメリカの海兵隊のような機能を持つ自衛隊版“海兵隊”「水陸機動団」で、長崎県佐世保市に置かれる予定。

 また、陸上自衛隊にアメリカ軍のオスプレイを15~17機配備する他、海上自衛隊には高速で航行する小型の護衛艦を新たに導入する。さらに、航空自衛隊には戦闘機部隊を新たに那覇基地に増やすなど、陸・海・空3つの自衛隊が連携して機動的に対処するという「統合機動防衛力」が打ち出された。一方で、離島防衛などに予算を振り向けるため、戦車は約300両に大幅削減し、北海道と九州に集中させる。

 格段にミサイルの性能を向上させている北朝鮮の弾道ミサイル防衛の強化も新たな防衛大綱の柱となっている。最新の迎撃ミサイルを搭載したイージス艦を2隻増やして8隻態勢にする他、地上迎撃型のPAC3も高性能の新型弾を導入する。また、中国や北朝鮮の動向を早期に察知するため、常時、警戒監視を行えるよう、グローバルホークのような無人偵察機も活用するとしている。

 一方で、北朝鮮のミサイル基地を攻撃する「敵基地攻撃能力の保有」については、世論や公明党に配慮して「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる」との曖昧な表記にとどめた。

 安倍首相が「歴史的な文書となる」と胸を張る今回の防衛大綱について、元航空自衛隊・南西航空混成団司令の佐藤守さんは「今までの歴代政府にとってみれば、画期的なものをやっていると思う。しかし、文章がいくらあったとしても意味がない。それによって、我々がやらねばならない作戦計画の基本はどこにあるか、F15戦闘機何機で我々は対峙(たいじ)しなければならないかという現実的な実力行使の作戦計画しか興味はないんです。やっと本気になったかなと。周りがいつ攻めてくるか分からない、こういう状況になって始めました、それは評価します」と話す。

 一層厳しさを増す日本の安全保障環境。新たな防衛大綱は17日に閣議決定される。