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暗殺から50年 父の遺志継ぐケネディ大使

2013年11月22日 16:21
暗殺から50年 父の遺志継ぐケネディ大使

 今週、正式に駐日アメリカ大使としての活動をスタートさせたキャロライン・ケネディ氏。その父・ケネディ元大統領は50年前の11月22日に暗殺された。事件から半世紀。アメリカではいま、大統領暗殺とその後のケネディ家の歩みが注目されている。

 19日、キャロライン・ケネディ駐日大使の信任状捧呈式が皇居で行われた。オバマ大統領からの信任状を天皇陛下に手渡した大使は、天皇陛下と約10分間会話をしたということだ。その大使が日本に到着しての第一声で触れたのは、父・ケネディ元大統領の遺志だった。

 「父の遺志を継げることを誇りに思います。父はアメリカの大統領として初めて日本を訪問することを望んでいました」

 いっぽう、大使を送り出したケリー国務長官も、同じようにケネディ元大統領に思いをはせていた。

 「キャロライン大使が日本に向かっているこの時、暗殺されて50年となるこの時期に、ケネディ大統領の50年前の言葉を思い出すのはもっともなことだ」

 元大統領がテキサス州ダラスで凶弾に倒れてからちょうど50年。アメリカではいま、ケネディ元大統領と一家の足跡を振り返るイベントが相次いでいる。4日にワシントン市内で開かれたシンポジウムでは、当時、暗殺の現場に居合わせた記者たちが事件について語り合った。参加した記者たちはこう語る。

 「私たち同行メディアのバスが倉庫を通過する瞬間に銃声がした。3発だったことは確かです」

 「最初、私は何を見ているのか理解できませんでした」

 そして、シンポジウムの司会者はこう述べる。

 「そのとき何をしていたのか、私たちはみんな詳細を覚えているものです」

 アメリカメディアは11月に入って、暗殺事件やその後のケネディ家に関する特別番組を次々と放送。50年たった今も関心は衰えていない。ワシントン市内の博物館では、ケネディ家に関する特別展示が行われており、数多くの写真が展示されている。会場には暗殺事件に関する資料や映像はもちろん、来場者が参加するかたちの展示もある。“暗殺の時”に関する、自らの記憶を書き込むスペースだ。この展示に関して博物館の職員はこう説明してくれた。

 「これはアメリカの歴史において大きな事件ですが、同時に人々にとってとても個人的なものでもあります。その当時どこにいて、どうやって事件を知ったかについてみんな話をしたいと思っています」

 書き込みはこれまでに2万5000にのぼるという。

 ケネディ家は“アメリカのロイヤルファミリー”とも称される特別な存在だ。いまも多くのアメリカ人に注目され慕われている。自宅の庭で高く抱き上げられる幼い頃のキャロライン大使が写る1枚の写真を見つけた。楽しげな親子の姿には、当時アメリカという国に満ちていた、“夢”や“希望”が重なる。

 キャロライン・ケネディ新大使が幼少期を過ごした家は、ワシントン市内に現在も残されている。この場所にも笑い声や泣き声が響いていたことだろう。現在ここに住む人は当時の雰囲気のまま、建物も庭も大切に使っていた。ジョージタウン周辺には、ケネディ家が暮らした家がいくつも残っている。もとの住まいに関する情報をまとめたウェブサイトもあって、これらの家を巡る人もいるという。ケネディ家の歴史は、アメリカの人々にとっての共通の記憶であり、共通の財産なのだ。

 そんな一家の輝かしい歩みに次の足跡を残せるのか。キャロライン大使は行政や外交に携わった経験がこれまで無く、その能力は未知数だ。しかし、人々の見方は「ケネディ家はこの国に多大な貢献をしてきました。だから、大使という仕事は彼女に適切だと思います」「彼女の家族みんなが政治に関わってきているし、ケネディ家のみんながすばらしい大使のようなものです。彼女以上に良い大使などいません」と好意的だ。

 ケネディ家というこれ以上ない“名門”出身の知名度と発信力、そしてオバマ大統領との太いパイプ。キャロライン・ケネディ大使が備える強みをどこまで生かせるかは、日本外交にとっても大きな意味を持つことになる。