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ソチ五輪「聖火トーチ」、いざ宇宙の旅へ

2013年11月15日 14:53
ソチ五輪「聖火トーチ」、いざ宇宙の旅へ

 今月9日、史上初めて宇宙でリレーをしたソチオリンピックの聖火トーチ。そのトーチのお披露目から宇宙の旅を終えるまでを取材した。

 ソチオリンピックの聖火トーチが披露されたのは、2013年1月のことだった。重さ1.8キロ、長さ95センチで、ロシアの民話に登場する「火の鳥の羽」がモチーフとなっている。この日、ソチオリンピック組織委員会・チェルニシェンコ会長は、壮大な計画を明らかにした。

 チェルニシェンコ会長「我々はオリンピック聖火が宇宙まで行くと期待しています」

 「宇宙大国ロシア」を世界にアピールしようというのだ。トーチが披露された4日後、トーチを設計したピロシュコフ氏を訪ね、聖火を宇宙へ運ぶにはどのような方法が考えられるのかを聞いてみた。すると…

 ピロシュコフ氏「サプライズを楽しみにして!」

 本当に聖火を宇宙へ運ぶことができるのだろうか?その疑問は残されたままとなった。

 しかし、その後のロシアでは、いん石が落下し多くの負傷者が出たほか、日本の首相が10年ぶりにロシアを公式訪問、さらに、CIA元職員のスノーデン氏が一時亡命するなど、世界的なニュースが伝えられる中で、聖火についての情報は少なくなっていった。

 その謎が解けたのは8月中旬、日本人で初めて国際宇宙ステーションの船長をつとめる宇宙飛行士・若田光一さんの訓練を取材した時のことだった。この日の訓練は、国際宇宙ステーションで火災が発生し、若田さんが船長として緊急事態に対処するという想定で行われた。

 この国際宇宙ステーションには3つの大きな危険があるという。1つ目は火災、2つ目はいん石が衝突するなどして穴が開き空気が漏れること、そして3つ目は有毒物質がステーションの中に流れ込むこと。つまり、国際宇宙ステーションで聖火トーチに火をつけることは、危険を伴うため不可能なのだ。

 結局、若田さんが乗る宇宙船ソユーズでトーチを国際宇宙ステーションに運び、火をつけずにリレーをすることになった。若田さんは「聖火に関する訓練も受けることになると理解しています」「オリンピックに関連したイベントが国際宇宙ステーション上で行われるのは非常に喜ばしいことだと思っています」と語ってくれた。

 10月、オリンピック発祥の地・ギリシャで採火されたソチオリンピックの聖火が、モスクワに到着した。多くの人々が見守る中、会場のステージに設けられた聖火の台に、プーチン大統領が点火をする。

 プーチン大統領「聖火よ、どうか無事にソチでまた会いましょう!」

 プーチン大統領が聖火リレーの開始を宣言した直後に聖火が消え、ライターで火をつけなおすというハプニングもあったが、聖火は北極点にも到達するなど、ソチオリンピックの開催を世界にアピールする格好となった。

 若田さんが宇宙へ向かう2日前、ソユーズロケットが姿を見せると、機体には、ソチオリンピックの公式デザインでもあるロシアの伝統的文様が描かれていた。打ち上げの11月7日の朝、若田さんら3人のクルーは、トーチと共に宇宙船へと向かった。そして、打ち上げは無事成功。安全確保のため、国際宇宙ステーションでは火はともされないものの、ロシアは、宇宙でのリレーを6万5000キロ以上にわたる聖火リレー最大の目玉と位置づけていた。

 そして9日、トーチはいよいよ宇宙空間へ。ロシア人宇宙飛行士2人が史上初めて宇宙でのリレーを成功させた。11日には宇宙船ソユーズで地球に戻り、宇宙の旅を終えたトーチ。2014年2月のソチオリンピックの開会式では、聖火台への点火という晴れ舞台が待っている。