×

ジャンは手作りで!韓国のスローフード事情

2013年10月11日 15:16
ジャンは手作りで!韓国のスローフード事情

 伝統的な食文化や、良質な食材の保護などを目的とする運動「スローフード」。今回は、韓国のスローフードに欠かせない“ジャン”の秘密をソウル支局・玄昶日記者が取材した。

 韓国・ソウル郊外の南楊州市で10月1日、「スローフード国際大会」が開催された。スローフードの国際大会がアジアで開かれたのは初めてのことだ。会場には、世界各国の伝統料理や食材を味わえるブースが並ぶ。「スローフード」とは、効率化・画一化・大量生産されるファストフードに対して始まった“食生活を見直す運動”だ。同時に、消えゆくおそれのある伝統的な食材を守ろうという運動でもある。

 日本のブースでは、伝統的な方法で造られた味噌(みそ)や醤油(しょうゆ)が人気を集めていた。韓国人客からは「韓国の味噌は深い味わいですが、日本の味噌はあっさりした味だと思います」という声が聞かれた。

 韓国の伝統料理を味わえるレストランもある。日本円で1人前・約2300円のコースを注文してみると、地元の野菜を使ったナムルや日本でもおなじみのチャプチェ、日本の味噌汁にあたるテンジャン・チゲなど、多くの品がテーブルに並ぶ。メーンは、牛肉をたたき、野菜とこねて焼いた「トッカルビ」だ。食感は、日本のハンバーグに似ているが、野菜がたくさん入っており、肉のうま味、野菜の甘みを堪能できる一品だ。

 ヨーロッパで開かれたスローフード国際大会でも、韓国料理を振る舞った料理人キム・ジヨンさんによれば、韓国のスローフードの特色は発酵食品だという。

 キムさん「テンジャン、カンジャン、コチュジャン、キムチのような発酵食品が代表的です」

 日本でも人気が高まった韓国料理。キムチや焼き肉が思い浮かぶが、ベースとなるのは、日本の味噌にあたる「テンジャン」、大豆や唐辛子に水あめなどを混ぜ発酵させた「コチュジャン」、日本の醤油にあたる「カンジャン」だ。これらは、3つの「醤(ジャン)」と呼ばれ、韓国の食卓に欠かせないものだ。

 ジャンは、どうやって造られるのだろうか?テンジャン造りを体験できる農園を取材した。すべてのジャンの元となるのは大豆だ。ゆでた大豆をつぶし、長方形の型に入れ、形を整える。これをつるして2~3か月ほど干し、自然発酵させることで「メジュ」と呼ばれるジャンの原料ができあがる。日本の味噌は麹(こうじ)を入れて発酵させるが、韓国のジャンは、自然発酵させる。均一につくりあげるのが難しいが、乳酸菌やビタミン類など多くの栄養を含んでいるという。発酵させた大豆、麦ご飯、塩などの調味料を混ぜ、さらに発酵させることでテンジャンができあがるという。混ぜ合わせた原料をツボに入れ、1年ほど漬けることでテンジャンが完成する。

 ソウル郊外の南楊州市で、民家の裏庭にズラリと並んだ「ジャン」のツボを見ることができた。郷土料理研究会の会長を務めるウォン・ジョンオクさんは、手作りのジャンにこだわっている。

 ウォンさん「テンジャンは発酵食品ですから、時間がたつほどうま味が増します。私たちは、3~4年熟成させたテンジャンを食べます」

 自らが造るテンジャンで料理の腕をふるうウォンさん。自家製テンジャンは豚肉との相性も抜群だ。ウォンさんは、豚肉のテンジャン焼きを振る舞ってくれた。調理をしながらウォンさんは語る。

 「努力さえすれば、誰でもおいしいジャンを造ることができます」「家族のことを思えば、ちょっと手間がかかってもジャンを造って食べるべきだと思います」

 作り手が手間をかけ、愛情を込めた韓国のスローフード“ジャン”。「食」や「健康」への意識が高まる中、ウォンさんは手作りのジャンを見直すべきだと話している。