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米政府、シリア政権の化学兵器使用を断定

2013年8月31日 18:54

 シリアで化学兵器が使われたとされる問題をめぐり、アメリカ政府はアサド政権が化学兵器を使ったと断定する報告書を公表した。「根拠」だとする文書が示されたことで、オバマ大統領が軍事攻撃に踏み切るかどうかの決断をいつ下すのかが焦点となっている。

 日本時間31日午後、シリアで化学兵器の使用を調べていた国連の調査団が、隣国・レバノンに出た。今後、分析に入るが、結果が出るまでには約2週間かかるとみられている。

 これに先立って、アメリカ政府は独自の調査結果を発表した。

 ケリー国務長官「少なくとも426人の子供を含む1429人が、化学兵器の攻撃で死亡した」

 アメリカがアサド政権が化学兵器を使用した「根拠」だとする情報は、人的情報や通信の傍受、衛星などのデータを基にまとめたとされる。

 それによると、化学兵器が使用された21日の3日前から、アサド政権の化学兵器担当要員が首都・ダマスカス郊外でサリンを含む化学兵器を使う準備を始めた。その後、21日に、アサド政権の支配地域から反体制派の支配地域に向けてミサイルが撃ち込まれた。シリア軍には、ガスマスクなどを準備するよう指示が出ていたという。

 攻撃が行われた後、シリア政府の高官が化学兵器の使用を確認、国連の調査団によって証拠が見つかるのではないかと懸念していることも傍受したという。

 ただ、化学兵器による被害の様子などの基となっているのは、どのような立場の人間が撮影したのかはっきりしないインターネットへの投稿映像。判断材料となった情報や記録そのものは「機密だ」として明示されなかった。

 これに対し、シリアの外務省は国営テレビを通じて反論、「テロリストが流したウソの情報に基づくでっち上げだ」と非難した。

 しかし、軍事攻撃への緊張感は日に日に高まっている。シリアとトルコの国境では、NATO(=北大西洋条約機構)軍のパトリオットミサイルが配備されていた。また、シリアから逃れてくる人はさらに増えている。シリアから逃れてきた家族は「アメリカの攻撃があると聞いて脱出してきた。子供に万が一のことがあってはならないので」と話していた。

 一方、オバマ大統領は30日、「女性や子供、罪のない一般市民が恐ろしい規模のガス攻撃に遭うことを世界は容認できない。何も行動しなければ、(化学兵器使用禁止の)国際規範は意味がないというメッセージになる」と述べ、シリアへの行動が必要だと強調した。

 オバマ大統領は「最終決断はまだしていない」と強調した。議会や同盟国との協議を重ねており、その意向も踏まえて軍事攻撃に踏み切るかどうか、判断するものとみられる。