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米・オバマ大統領 平和への秘策は?

2013年3月28日 16:15
米・オバマ大統領 平和への秘策は?

 アメリカのオバマ大統領は先週、中東のイスラエルを訪問した。イスラエルはイランの核開発に強く反発し、軍事攻撃の構えも見せている。なんとか衝突を避けたいオバマ大統領にはある秘策があった。ワシントン支局・青山和弘記者が取材した。

 20日、オバマ大統領がイスラエルに到着して早々、ネタニヤフ首相との首脳会談が行われた。イランが実際に核兵器を製造するまでには約1年かかるとの認識で一致し、外交的な解決を模索する一定の時間が残っていることを確認した。しかし、その一方でネタニヤフ首相は、イランが核兵器開発能力を持つ前に軍事攻撃を辞さないとの従来の姿勢は崩さなかった。ネタニヤフ首相は会談で「これまでのところ、外交と経済制裁ではイランの核計画を阻止できていない。今、我々には自らを防衛する権利と能力がある」と語った。

 イスラエルは本当に単独でもイランへの軍事攻撃に踏み切るのだろうか?

 イスラエルの情報機関“モサド”の元高官・グリーン氏に話を聞くことができた。イランは核兵器の開発を否定しているが、グリーン氏は「開発は明らかだ」とした上でこう述べた。

 「核攻撃の危険性があるので、イスラエルは核兵器を保有したイランとは共存出来ない」

 さらにグリーン氏は、2013年中にイランを攻撃するかとの問いにこう答えた。

 「誰も答えることができない質問だが、イスラエルには攻撃する能力がある。すべての核施設を破壊する能力はないが、イランの計画を数年遅らせることはできる」

 しかし、イスラエルが実際に軍事攻撃に踏み切れば、イランからの報復攻撃は必至だ。市民は脅威にさらされる。イスラエル市民のエイタン・アムラミ氏の家には、ミサイル攻撃などに備えたシェルターがあった。新築の家には法律で設置が義務づけられているのだ。そして、アムラミ氏が取り出したのは、なんとガスマスクだ。これも政府が国民に配布したもので、驚くほど本格的なマスクだ。アムラミ氏に、イランの核施設への攻撃を支持するかどうかを尋ねると、「恐怖を感じます。イスラエル単独で(イランを)攻撃するべきではない」と話してくれた。国民の間にはイランとの軍事衝突へのおそれも広がっている。

 今回のオバマ大統領のイスラエル訪問は、こうした国民に直接訴えることが目的の一つだった。22日、オバマ大統領はイスラエル国民に向けてこう演説していた。

 「私はアメリカの立場を明確にしてきた。イランに核兵器は絶対に持たせない」

 会場からは割れるような拍手が起こる。さらにオバマ大統領は演説を続ける。

 「信念に基づいた強い外交は、イラン政府に核兵器をあきらめさせるには最もいい方法だ。しかも戦争より平和がよほどいい」

 外交的な解決を強く主張するオバマ大統領。そして、イスラエル国民にも平和に向けた努力を求めた。

 「平和は指導者の考えではなく、人々の心から始まる。また周到な計画ではなく、この地で共に生きる人々の日々の関係から始まる。政治指導者は人々が望まないリスクは取らない。皆さんは望む変革を自ら作り出さないといけない」

 聴衆からは、オバマ大統領がイランに核兵器を持たせないという約束を守ってくれるなら、オバマ大統領に賛同するとの声が上がった。演説を聴いた人は「イランからの脅威は現実だと思うが、オバマ大統領が演説で触れた(イランに核兵器を持たせないという)約束を守る限り、前向きに考えます」と語ってくれた。

 オバマ大統領は今回、限られた時間の中でイランの核開発に歯止めをかける責任も負った形だ。これまでは中東問題に消極的との批判も浴びたオバマ大統領だが、今後はそのリーダーシップが問われることになる。