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ソチ五輪まで1年 国を挙げたプロジェクト

2013年2月14日 18:09
ソチ五輪まで1年 国を挙げたプロジェクト

 ロシア・ソチで行われる冬のオリンピックまで1年となった。開催1年前を祝うイベントでは、隠されたメッセージを発見した。そのメッセージとは?モスクワ支局・山内康次記者が取材した。

 会場ではカウントダウンの声が響いている。ロシアで初めて行われる冬のオリンピックの開催まであと1年となった8日、ソチはお祝いムードに包まれた。開催1年前を祝うイベント会場で、プーチン大統領はこうスピーチした。

 「皆様をロシアで行われる第22回冬季オリンピックに招待します」

 ソチオリンピックは、約4兆5000億円というオリンピック史上最高額の投資のもと行われ、11か所の会場を新たに建設する。プーチン大統領が打ち出した計画は、全ての会場をゼロから作るという壮大なものだ。ソチの中心部や空港からオリンピック会場へ向かうための高速道路に、新たな鉄道の路線やロシア最大となる駅も建設中だ。競技施設建設公団の広報室長は、この事業のメリットを「ソチの人々は交通やインフラを使うことができるのです。オリンピックはこの町とロシア南部の発展に貢献します」と語る。

 さらに、ソチの高台には富裕層向けの高級マンションがいくつも建てられ、“完成済み”や“販売中”と書かれた大きな看板が目立つ。一体、どんな眺めなのか?建築中のコンドミニアムを訪ねた。バルコニーから景色を眺めると、黒海が目の前に広がった。ロシア南部に位置するソチは、黒海の近くにあるリゾートだ。冬のオリンピックが行われる2月の平均気温は9℃で、市街地は15℃近くになる日も多いという。取材した日は、なんと半袖で過ごせるほどの気温だった。

 そのソチでは、すでにオリンピック商戦の熱も高まっている。ソチの中心部にある土産屋を訪ねると、ソチオリンピックのキャラクターグッズやロシアらしいマトリョーシカティーポット(600ルーブル・約1800円)、さらにはプーチン大統領のブロマイド(15ルーブル・約45円)があった。経営者に話を聞くと「(プーチン大統領は)この町によく来るんですよ。これはよく売れます。みんな家に飾るのですよ」と教えてくれた。ソチオリンピックの組織委員会は、グッズの販売で約28億円以上の利益をあげることを目標にしているという。まさに、けた外れと言ってもいい。

 それだけではない。オリンピック開幕までちょうど1年に向けてのカウントダウンに、プーチン大統領のある考えが見え隠れしていた。地元メディアは、オリンピックが開かれる2014年にちなんで、開会式は20時14分に行われると伝えている。しかし、この日のイベントでのカウントダウンの時刻を確認してみると、時計は21時14分を指していた。なんと、オリンピックの開幕までに時差を1時間ずらす考えのようだ。世界標準時間との時差を4時間から3時間に縮小する理由は、ヨーロッパとの時差だ。ソチでの午後8時の競技は、ロンドンでは午後4時に観戦することになる。これだとロンドン市民はまだ仕事中で観戦がしにくい時間だ。時差を1時間縮めると、ソチが午後8時でもロンドンは午後5時になる。すると、より多くの人が観戦しやすくなるのだ。しかし、この時差の変更は一筋縄でいかないようだ。

 元々、ロシアは、夏時間と冬時間を採用していたが、2011年、当時のメドベージェフ大統領が現在の時差に統一した。地元関係者が「メドベージェフ氏の失脚も時間の問題」と分析するほど確執が伝えられるプーチン大統領とメドベージェフ首相。実は、イベントの直前に行われた閣議で、メドベージェフ首相は時差の変更に反対していたのだ。オリンピックまでが政治闘争の舞台になってしまうロシアだが、市民にとってはかけがえのないイベントだ。市民からは「オリンピックのお客さんを待っています。私たちが愛する町に集まってもらいましょう」との声を聞くことができた。

 時差まで変えてしまおうとは、まさに国を挙げた一大プロジェクトである。雪と氷の祭典、ソチオリンピックまであと1年だ。