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不活化ワクチン接種開始…一部地域で混乱も

2012年9月13日 20:18
不活化ワクチン接種開始…一部地域で混乱も

 乳幼児のポリオを防ぐ「不活化ワクチン」の接種が今月から始まった。ポリオの「生ワクチン」では手足のマヒなどの副作用が心配だという声が高まっていたことから、副作用が少ない不活化ワクチンを待ち望む声が上がっていた。しかし、一部の地域では早くも混乱が起きている。

 ポリオは日本でも約50年前に流行した病気で、ウイルスが口から入って感染し、手足のマヒが現れることがある。現在の日本では見られないが、パキスタンやアフリカの一部などで流行していて、旅行者を介してウイルスが日本に入ってくるおそれがある。そのため、ワクチンの予防接種が必要となっている。

 ワクチンとは病気のもととなるウイルスを入れた薬で、これを飲んだり注射したりして体に入れると、体内にこのウイルスとたたかう抗体ができ、ウイルスが入ってきた時にこれを撃退できる。

 これまでのポリオの予防接種では、ウイルスを生きたまま使うため、まれに手足のマヒが起きることがあり、より安全な不活化ワクチンを待ち望む声が高まっていた。不活化ワクチンは、ウイルスを殺して必要な成分だけを入れたもので、手足がマヒする副作用はない。

 医療機関には現在、不活化ワクチンを注射するため、乳児を連れた保護者が多く訪れている。接種は始まったばかりだが、川崎市など一部の地域では、現在接種すべき子供に加え、副作用を心配して過去に接種しなかった子供も一気に来るため、不活化ワクチンが足りない事態に陥っている。

 川崎市の「新ゆり内科」では、ワクチンが足りず、予約の変更に追われていた。今週、30人分を予定していたが、川崎市は、市が一括購入する仕組みのため、割り当てられたのは週に15人分で、予定通り接種できない状態となっている。看護師は次々とかかってくる電話の対応に追われ、ワクチンが不足している旨を説明していた。

 新ゆり内科・高橋央医師は「あわてて打たないで、十分なワクチンが見込める段階で接種を始めてはいかがか、という形でご案内しています。11月以降だったら、状況は改善しているんじゃないかと思われます」と話している。不活化ワクチンは3月末までに477万本が出荷される予定だという。

 厚労省は、「ワクチン不足が起きているのはごく一部の地域」とした上で、「これまで接種を控えていた子供の分も含め、十分な量があるので、慌てず落ち着いて接種の予定を立ててほしい」と呼びかけている。3種混合に、このポリオを入れた4種混合は11月から始まる予定。不活化ワクチンの予防接種の回数などの詳細は、厚労省や地域の保健所のホームページなどで確認できる。