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EU首脳会議 銀行に直接資本注入で合意

2012年6月30日 9:48

 ベルギーで行われていたヨーロッパ連合(EU)の首脳会議は29日、ユーロ圏諸国が政府を経由せずに銀行に直接、資本を注入できる仕組みを作ることなどで合意し、閉幕した。財政規律重視の路線でユーロ圏をけん引してきたドイツにとっては、譲歩した形となった。

 金融支援はこれまでそれぞれの政府を経由していたが、今回の合意では、来月にも設立される基金から、直接、銀行に資金を注入できることになる。政府が新たな借金を背負うという形を避け、市場での信頼低下を防ぐのが目的。これは国債の利回り上昇に危機感を持つスペインとイタリアが即効性のある対策を強く求めた結果で、瀬戸際の状況で臨んだ両国にとっては大きな成果となった。

 一方、財政規律を重視し、基金に最も多くの資金を拠出しているドイツにとっては、より緩い条件で金が出ていく仕組みは決して歓迎できるものではないが、長時間の協議の末、受け入れた。メルケル首相は「『見返りのないものに出し続けない』という信条に変わりはない」とこれまでの原則を繰り返したが、譲歩せざるを得なかった形。

 今回、「借りる側」のスペインなどがいわば「勝ち」を収めた背景には、フランスの「ドイツ離れ」がある。サルコジ大統領時代には「メルコジ(メルケル+サルコジ)」とも呼ばれた盟友関係から一転、オランド大統領は、財政規律一辺倒のドイツとは距離を置き続けている。

 こうした対立にEU・ファンロンパイ大統領は「勝者は誰で敗者は誰か?我々はゲームをしているのではない。常に正しい見識のもとでの合意をしている」とクギを刺した。

 ドイツは「銀行の監督を一元化する制度をつくる」という条件をつけて矛を収めた形だが、ユーロ圏各国が危機回避に向けて必ずしも一枚岩ではないことが、改めて浮き彫りとなった。