×

米国では不安も、被災地からの漂着物

2012年5月23日 15:03
米国では不安も、被災地からの漂着物

 東日本大震災の津波で流されたバスケットボールや大型バイクなどが、アメリカやカナダの太平洋沿岸で見つかっている。持ち主がわかりホッとした声も上がる一方、現地ではある問題が起きている。アメリカ・ロサンゼルス支局・加藤高太郎記者が取材した。

 4月中旬、カナダ西部の静かな島々、クイーンシャーロット諸島に大型バイクが漂着しているのが見つかった。バイクを見つけたのはピーター・マークさん(32)。実物を見せてもらうと、かなりさびてはいるがバイクであることははっきりとわかる。ハーレーダビッドソン社製の大型バイクだ。見つけた時には、砂浜に流れ着いたコンテナの中にあったという。マークさんは、「ナンバープレートに日本語の文字が書かれているのに気づき、これは“津波による漂流物”かもしれないと思った」と、当時の状況を語る。

 ナンバープレートに記されていたのは「宮城」の文字。その後、報道をきっかけに、持ち主は、6000キロ以上離れた宮城県の男性であることが判明した。庭のコンテナで保管していたところ、自宅とともに流されたという。マークさんは、「彼のもとにバイクが戻り、前向きな気持ちになってもらえるように願っています」と思いを語る。

 マークさんは、海岸に流れ着いたものを集めるのが趣味だという。このほかにも最近、日本語が書かれたポリ容器なども見つけた。津波で流されたものかは断定できないが、最近、日本からとみられる養殖用の浮き球や発泡スチロールなどが増えたという。マークさんは「日本から来たとみられる漂着物の数は、例年以上だと思います。去年よりも今年の方が明らかに多いです」と話す。

 実際に海岸に出て、漂着物を探してみると、瓶らしきものが見つかった。ふたには「福建省」と書かれている。中国から流れて来たものだろうか。この日は約1時間、漂着物を探したが、日本からとみられるものは見つからなかった。しかし現地では、様々なものが、続々と流れ着いてきている。マークさんの友人が見つけたのはサッカーボール。寄せ書きとみられる、たくさんの日本の文字が記されていた。また、アラスカの島では、地元の高校生がバスケットボールを発見。プリントされた学校の名前から、岩手県の中学校のものと判明した。発見した高校生は「想像もしない場所から来たなんて、本当にすごいことです」と、驚きを隠せない。

 日本の環境省の予測では、2013年2月までに約4万トンの漂流物が、北米の沿岸部に到達するとされている。しかし、一部の浮きやすいものは、すでに漂着しているとみられている。これに対して、太平洋沿岸の人々からは、漁業や観光業といった地元経済への影響を懸念する声が上がり始めている。先週、アメリカ議会では公聴会が開かれ、議員が政府に対応を求めた。「信じられないような経済的な不利益をこうむる可能性があるのは明らか」との議員の声に、担当者は「ガレキが漂着する場所を特定できるよう、全力を尽くしている」と述べるにとどまった。

 東日本大震災から1年以上が経過し、大きく注目され始めた漂着物の問題。地元からは早急な対応を求める声が日ごとに強まっている。