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ミャンマーの変化したファッション

2012年4月11日 16:37
ミャンマーの変化したファッション

 民主化への動きが進んでいるミャンマー。そんな中、女性たちのファッションにも変化があらわれ始めた。ミャンマーの最新ファッション事情を山下雄三記者が取材した。

 「政治への参加を決断した国民の勝利です!」

 力強く演説をする女性。民主化運動のリーダー、アウン・サン・スーチーさんだ。2012年4月1日、ミャンマーで行われた議会の補欠選挙で、アウン・サン・スー・チーさん率いる政党が圧勝した。20年以上続いた軍事政権から、2011年3月、大統領を国家元首とする新しい政権へと移行し、民主化への動きが進んでいるミャンマー。軍事政権時代の抑圧から解放されつつある雰囲気は、街中の風景からも見て取れる。例えば女性のファッション。ミャンマーと言えば、巻きスカートを身につけ、顔には「タナカ」という木の粉でできた日焼け止めを塗るのが一般的だった。しかし、最近ではある変化が起こり始めている。

 ヤンゴンの繁華街にあるショッピングモールには、ミャンマーの伝統的なスタイルとは違う西洋的でファッショナブルな洋服が売られていて、若者たちが買い物を楽しんでいる。最大都市ヤンゴンにはこの1年あまりで5つ以上のショッピングモールが新設された。おしゃれに着飾った若い女性たちが最新のスタイルを求めて集まる。買い物をしている若者たちに話を聞いてみると、「カワイイおしゃれな服を着ると、注目されてとても満足するの」「気分いいわよね」「ミャンマーのスタイルは歩きにくいし暑いので、お寺に行くときや目上の人に合うとき、学校に行くときにしか着ません」と、みんな笑顔で語ってくれた。

 木の粉である「タナカ」が一般的だった化粧品にも変化が。日本の化粧品メーカーの商品を扱っている代理店では、日本円にして一本5000円という美白化粧品が一番の売れ筋だ。ミャンマーでは一般労働者のひと月分の給料にも相当する値段だ。化粧品店を経営するネ・ネ・アウンさんは、値段の高いこの商品が売れている理由をこう語った。

 「みんな白くなりたいんです。だから美白の商品は売れるんです。お医者さんやOLが買っていきます」

 自由にファッションを楽しめるようになったのは、政府がこれまでの方針を転換したことも理由の一つだ。地元の出版社が作っているファッション雑誌は、以前は出版前に当局の検閲を受ける必要があり、女性の肌が露出した写真などは、修正を命令されていた。修正されたページを指さしながら、「修正前は足が見えていました。命令を受けてストッキングをはいているように写真を加工しました」と、ヌ・ミャット・ティンギ・ウ編集長が説明してくれた。今は検閲が緩和され、事前に修正させられることはほとんどなくなったということだ。編集長は「とてもうれしいです。好きなように雑誌を作ることができます」と、この変化を大いに喜んでいる。

 こうした、以前よりも比較的自由な空気の中からは、こんな女性たちも生まれた。K-POPスターばりの派手な衣装とダンスを売りにしたアイドルグループだ。彼女たちは、ステージやビデオ撮影で着る衣装が以前に比べて自由に選べるようになったと言う。そして、歌詞の内容もより自由に表現できるようになった。

 「以前は政治的な言葉が入らないようにしていました。政治とは関係のない歌詞でないと、検閲をパスできず発売できないの。今回は初の試みよ」

 彼女たちは、以前の軍事政権下での活動状況をそう語ってくれた。次のアルバムには初めて政治的なメッセージを含む歌を収録できる予定だ。その歌を美しい声で披露してくれた。

 「一緒に黄金に輝く国を作ろう 私たちに必要なのは自由 自由こそすべて」

 軍事政権を嫌って海外へ政治亡命したミャンマー人に帰国を呼びかける内容だ。

 少しずつ自由の風が吹き始めた中で、新しいスタイルを模索し始めた女性たち。その姿は変わりつつあるミャンマーの象徴のひとつといえそうだ。