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中国・次期指導者が訪米、厚遇のウラでは…

2012年2月22日 15:36
中国・次期指導者が訪米、厚遇のウラでは…

 中国の次期最高指導者に内定している習近平国家副主席が2月中旬、アメリカを公式訪問した。ワシントンでは国賓級の待遇を受ける一方、訪問した先々では、大規模な抗議デモも行われた。ワシントン支局・平野亜由子記者が取材した。

 習近平国家副主席が13日、ワシントンに到着。オバマ大統領のほか、クリントン国務長官、パネッタ国防長官といった主要閣僚らと会談した。今後の米中関係を担う次期最高指導者に内定しているだけに、アメリカ政府は破格の待遇で迎えた。しかし、ホワイトハウス前では、チベットの人権状況改善を求める人々の抗議活動が行われ、こんなシュプレヒコールに包まれる場面もあった。

 「中国は恥を知れ!」

 習副主席の行く先々で、中国の民主化や人権状況の改善を求める人々が押しかけ、大規模な抗議活動が行われた。企業幹部らとの会合のためワシントン市内の会場に到着した際には、デモに参加する人々から、習副主席が直接、罵声(ばせい)を浴びる場面も。抗議活動に参加した人の中には、中国人の人権活動家・余傑氏の姿もあった。

 余氏は、中国共産党を批判する論文を発表したり、アメリカ・ブッシュ前大統領と面会したりして、人権状況の改善を訴えてきた。ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏とも親交が深く、中国を代表する人権活動家のひとりと言える。このため、中国では、常に当局の監視下に置かれ、たびたび身柄も拘束されてきた。

 こうした状況に耐えられなくなった余氏は2012年1月、家族とともに北京を離れ、ワシントンにやってきた。余氏はアメリカでの状況を「私は中国で暮らしていた時、このような公の場で自分の意見を述べられる可能性が全くなかった。家で作品を書く自由さえ、はく奪されていた。アメリカでは恐怖を感じずに心から言いたいことが言える」と話す。現在、余氏は、アメリカ政府に亡命を申請している。

 そんな余氏だが、「習副主席には何の期待もしていない」と切り捨てる。抗議活動に参加する理由には、アメリカ政府に対して、人権問題でもっと厳しい姿勢を示して欲しいとの思いがある。余氏は、アメリカと中国との間で、経済面での結びつきが強くなるにつれて、中国に対する人権問題での追及が鈍くなっていると感じている。余氏は、「西側の人々は、中国の人権問題を重要な問題と位置づけるべき。経済や貿易のために人権問題を犠牲にしてはいけない」と語る。

 一方、習副主席は、クリントン国務長官らアメリカ政府高官の前で行ったスピーチで、「中国では改革開放以来、人権の改善では大きな成果を上げた」と胸を張った。その習副主席の目に、抗議の声を振り絞る余氏らの姿はどのように映ったのだろうか。

 ワシントン滞在中に習副主席は、「人権状況ではさらに改善の余地がある」とも語っており、新体制となる2012年秋以降、中国の人権問題に少しでも変化が見られるのかが注目されている。