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津波警報 避難に生かすよう改善

2012年1月1日 15:01

 東日本大震災で気象庁が発表した津波の高さの予想が実際の津波を大きく下回ったことを受けて、気象庁は12年、津波警報を改善する。

 11年12月、気象庁は「津波警報の発表基準等と情報文についての提言(案)」をまとめた。提言では、巨大地震の場合、第1報では津波の具体的な高さを示さずに「巨大な津波」などと表現して住民が避難行動を取りやすいようにし、情報も簡素化するとしている。

 11年3月11日に発生した東日本大震災では、気象庁は地震発生から3分後の午後2時49分に大津波警報を発表した。しかし、当時、気象庁が警報発表に用いた地震の規模を示すマグニチュードは7.9。数日後、マグニチュードは9.0と修正されたが、このマグニチュードの過小評価が津波被害の拡大を招いたとされ、気象庁は有識者らとともに自ら検証作業を進めてきた。

 気象庁は、マグニチュードを過小評価した問題については、地震計が振り切れるほどの巨大地震の場合、現在の技術では解決できないとしている。その背景には、地震発生後3分以内に警報を発表するという大前提がある。93年に発生した北海道南西沖地震では、地震の発生後5分で警報を出したが、奥尻島にはすでに津波が到達していた。

 このように、海で囲まれた日本列島では地震発生とほぼ同時に津波が来ることが珍しくなく、地震の正確な規模を割り出すより先に一刻も早く警報を出すことが求められている。

 このため気象庁は、地震直後にマグニチュードが正確にはわからないと判断した場合、第1報の津波警報には具体的な津波の高さを示さず、「巨大な津波」や「大きい津波」などの表現にとどめ、まずは避難行動を取ってもらえるように発表する。今後、巨大地震の発生が予想される南海トラフ沿いの地震など、マグニチュードが8を超える場合が対象となる。

 また、同じ津波予報区の沿岸でも、場所によっては数十分から1時間程度、津波の到達に差があるため、残された時間にかかわらず「ただちに避難」することを求める。

 さらに、津波の第1波が観測された場合に発表される高さについても、数十センチ程度だと東日本大震災のように安心感を与えてしまうため、発表しないという。

 このように、住民にとってわかりやすくすることに力を入れた。

 政府の防災機関も連携して、津波警報をいち早く伝える努力をしている。その一つが、携帯電話を使った津波警報の伝達だ。これまでは「NTTドコモ」が「エリアメール」を使って緊急地震速報を携帯電話の利用者に配信してきたが、気象庁は今後、総務省や事業者などにも協力を求めて、津波警報の伝達についても携帯電話を利用するための協議を行っている。

 気象庁は12年1月中旬までこうした改善案について国民から意見を募集しており、3月には最後の検討会を開催して新たな津波警報の仕組みを決めたいとしている。

 東日本大震災のような津波被害を二度と出さないため、津波警報の早期改善が求められる一方で、強い地震の揺れを感じた場合、沿岸の人は警報を待たずに高台に避難するなど、個人の防災意識の向上も求められている。