×

アラブに本当の春は来たか

2011年12月31日 16:45

 11年は、中東諸国で民主化を求める民衆蜂起「アラブの春」が各国の独裁政権を倒した。12年はその後の国造りの行方を占う重要な年になる。

 11年2月にムバラク政権が崩壊したエジプトでは、人民議会選挙の投票が続いている。12年1月半ばには議席が確定する予定だが、穏健イスラム原理主義勢力「ムスリム同胞団」の政党が大幅に躍進するとみられている。

 人民議会は今後、エジプトの新たな憲法を制定するために重要な役割も担うことになり、ムスリム同胞団のようなイスラム勢力が新しいエジプトをどのように舵(かじ)取りしていくのか注目される。12年6月末までには、エジプトの新しい顔を選ぶ大統領選も行われる予定。

 エジプト各地では、軍の暫定統治に反対するデモが続いており、民主化プロセスが進む中で、影響力を残そうとする軍と、これを排除しようとする民主化勢力の間で緊張が高まるおそれもある。

 また、カダフィ政権が崩壊したリビアでは、12年中に議会選挙が行われる予定。リビアでは、カダフィ政権時代から部族や地域対立が根強く残っており、リビア内戦が激化した一つの要因とされてきた。今後、議会選など民主化プロセスを通じて、こうした地域対立を乗り越えることができるかどうかも課題になる。

 一方で、政権側と民衆デモの激突が続いている国もある。

 アラビア半島のイエメンでは、11年、長期独裁政権を敷いてきたサレハ大統領が退陣に合意、12年2月には大統領選も行われる予定だが、デモ隊はサレハ大統領が影響力を残さないことや直ちに辞任することを求めて、治安当局との衝突が続いている。

 また、アサド政権による激しいデモ弾圧が現在も続くシリアでは、すでに5000人以上が死亡したとされている。弾圧を停止させるため、周辺諸国でつくるアラブ連盟からの監視団がシリア入りしているが、弾圧はその後も続いているとみられ、実効性に疑問符がつき始めている。流血拡大にどう歯止めをかけるのか、欧米各国など国際社会の対応も焦点となりそうだ。