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南スーダンPKO、課題山積の自衛隊派遣

2011年12月31日 11:15

 12年はアフリカ・南スーダンでのPKO(=国連平和維持活動)に陸上自衛隊の施設部隊が派遣される。PKOに求められる機能が多様化する中、多くの課題も明らかになっている。

 11年、野田政権は「南スーダンの国造りに貢献する」として陸上自衛隊の施設部隊330人を派遣する方針を打ち出した。自衛隊は首都・ジュバを中心に活動し、12年1月に先遣隊が、5月頃に施設部隊本隊が現地入りする予定。

 南スーダンは20年以上にわたる内戦の末、11年7月に独立したばかりの新しい国で、全国の舗装道路は60キロしかない。そこで国連は、インフラ整備の技術力を持った施設部隊の派遣を強く要請、PKO参加が決まった。

 一方で、南スーダンでのPKO活動には多くの課題もある。

【物資や重機の輸送ルート確保】

 内陸国の南スーダンは、海岸線から2000キロ離れており、空港も十分に整備されていない。そこで、海上自衛隊の輸送艦や民間の大型輸送機を使い、陸・海・空の輸送手段を組み合わせて運搬を行う方針。

【衛生環境】

 南スーダンは衛生環境が極めて悪く、マラリアや黄熱病に感染する危険性もあることから、派遣前に自衛隊員は約10本の予防接種を受ける。また、病院などの医療施設も整っておらず、手術が必要な場合は、隣国・ケニアの首都・ナイロビまで航空機で輸送する必要がある。

【治安状況】

 活動拠点のジュバの治安は安定しているが、国境付近では反政府武装勢力との衝突で多数の死者も出ている。自衛隊の派遣は数年間を想定しており、国連は将来的にはジュバ以外の地域でも活動するよう求めている。政府は、武器使用を正当防衛など必要最小限に限定したままで自衛隊を派遣するが、野党からは法整備・環境整備が不十分だとの批判が出ている。

 こうした課題もあり、防衛省は当初、南スーダンへの自衛隊派遣に慎重な姿勢だった。しかし、国際貢献をアピールし、アフリカでの将来的な資源獲得にもつなげたい外務省や官邸サイドの意向に押し切られる形で派遣が決まった。

 近年、PKOはかつての停戦監視などに加え、紛争後の国造り支援や市民の警護など多くの役割を求められるようになりつつある。「道路整備のために本当に自衛隊が必要なのか」との指摘も聞かれる中、政府には、「国際貢献」の一語で済まさず、自衛隊派遣の明確な目的と戦略を国民に説明することが求められている。