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福島第一原発事故、教訓と課題は?

2011年12月29日 2:12
福島第一原発事故、教訓と課題は?

 福島第一原子力発電所事故は「冷温停止状態である」と宣言され、政府の事故調査検証委員会の中間報告が26日に公表された。委員会は、備えの甘さと想定の甘さを厳しく指摘した。事故の教訓について、社会部原発班・スノー沙理記者が報告する。

 委員会はまず、「東京電力」の津波の想定が甘かったことを指摘した。福島第一原発の事故の際のマニュアルである「事故時 運転操作手順書」には、津波によって電源を完全に失った事態は想定されておらず、備えや社員教育もされていなかったという。

 政府にも想定の甘さがあった。調査委員会の報告によると、緊急時に情報の拠点となるはずだった福島・大熊町の「オフサイトセンター」は通信手段が絶たれた上、放射性物質対策がなされておらず、全く機能しなかった。このため、関係機関の情報発信や連携がままならなかった。単に現場のミスや認識不足が問題なのではなく、事故の想定が甘いために事前対策が抜け落ちていたことが今回の事故の根本原因と言える。

 現在、事故を起こした原子炉は「冷温停止状態」とされ、今後は廃炉に向けた作業が本格化するが、作業の多くでは遠隔操作のロボットが使われる。まず、原子炉建屋を除染する必要がある。放射性物質を含む汚染水が漏れだしている格納容器の損傷部分を特定し、水を止める工事を行って中の燃料の状態を調査する。その後、格納容器に水を張った上でアーム型ロボットを使って溶け落ちた燃料を取り出す。ただ、その開発自体がこれからで、専門家は「国を挙げた取り組みが必要だ」と指摘する。

 東京大学工学系研究科・寺井隆幸教授「かなり長期間にわたるプロジェクト。その間に研究費や資源を投入して、マンパワーをかけて、これを目的に開発していけば夢物語ではないと思う。産業界や学会などが一致協力し、オールジャパン体制でやる必要がある」

 原発事故は人々の暮らしを一変させ、原子力の安全を考える上であまりに多くの問題点を浮き彫りにし、今後も大きな困難が待ち受けている。