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米国、迷惑な巨大魚をビジネスチャンスに!

2011年11月30日 16:36
米国、迷惑な巨大魚をビジネスチャンスに!

 今、アメリカでは巨大な魚が繁殖し続け、生態系に深刻な影響が出ている。この現状をビジネスチャンスに変えようと奮闘する人々を、ニューヨーク支局・土屋拓記者が取材した。

 アメリカ・イリノイ州の川で、今、ある魚が繁殖し続けている。ボートに乗って、その漁に同行させてもらうと、水面から一斉に飛び跳ねる魚が見える。跳ねた魚がそのままボートに飛び込んでくるほどの多くの数…アジアン・カープと呼ばれるコイ科の淡水魚だ。藻をエサとして食べるということで、湖の水質を改善するため、中国などからアメリカに持ち込まれた。しかし、20年前の洪水で周囲の川にまでアジアン・カープが流れ込んだという。

 漁師のティムさんは、川の状況について「アジアン・カープは、ほかの魚を追い出し、今は、川全体の90~95%に増えている。元々いた魚が絶滅しはじめているんです」と、説明する。繁殖し続けるアジアン・カープの漁業への被害は深刻で、オバマ政権も電気網やスタンガンを使った捕獲作戦に乗り出している。

 そんな中、増え過ぎたアジアン・カープをビジネスチャンスに変えようという試みもすすめられている。水産加工会社「シャーファー・フィッシャーズ」では、アジアン・カープを切り身やミンチ状にし、加工食品として売り出している。トルコやインドネシアなどで需要が高いということで、今や18か国に輸出するヒット商品となったという。マイク社長は「アジアン・カープの事業は伸びていて、来年は50%増を予想しています」「会社の未来はとても明るいです」と、話す。

 さらに地元の経済界では、アジアン・カープを食用として、アメリカ国内で有効活用ができないかと模索している。たとえば、その取り組みのひとつが地元議員やビジネス関係者を招いた“アジアン・カープ料理”の試食会だ。会場に並ぶのは、ラザニアやピーマンの肉詰め、そして、アジアン・カープのくん製…普段は食べない魚への抵抗感を少しでも減らそうと、元の魚の形が見えない料理がそろえられた。料理を担当したシェフのリンダさんは「牛ひき肉の代わりに、アジアン・カープをひき肉にして使いました」「最初は、ひき肉にしたものから始めるのが良いと思います」と、その狙いを説明する。

 招かれた人のほとんどが、アジアン・カープを初めて味わうことになったが、意外にもその評判は良かったようだ。試食した人たちからは、「正直、こんなにおいしいとは(アジアン・カープとは)気づきませんでした」「普段は、魚を食べる方ではないのですが、とてもおいしかったです」との声が聞かれた。また、イリノイ州では、数百人規模の試食会や、貧困層に料理を提供するキャンペーンなど、さまざまな取り組みが始まっているという。

 年間15%の割合で繁殖し続けるというアジアン・カープ。迷惑な巨大魚をビジネスチャンスに変える試みはこれからも続けられる。