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米中の主導権争い、狭間に立つ日本の存在感

2011年11月20日 0:57

 インドネシア・バリ島で開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議が日本時間19日、閉幕した。会議の行方を左右したアメリカと中国の主導権争いの狭間(はざま)に立つ日本の存在感について、政治部・野口敦史記者が報告する。

 一連の会議での主役はアメリカと中国で、その主導権争いが注目された。まず、経済連携の分野では、自由貿易のルールを作るのはアメリカを中心とする環太平洋経済連携協定(TPP)か、中国が望むASEANを軸とした枠組みか、激しい綱引きが行われた。

 これに加え、アメリカが初めて参加した東アジアサミットでは、中国がASEAN諸国の一部と対立を深めている南シナ海での権益問題が取り上げられた。中国がこの場での不測の緊張を避けようとして求めたのか、サミット前に急きょ米中首脳会談が行われた。しかし、アメリカが「多国間の枠組み」での解決を主張する一方、中国は当事国間での話し合いを主張してアメリカの関与をけん制し、両国の思惑はぶつかった。

 受け身に立たざるを得ない中国の温家宝首相は今回の滞在中、2日間で2度も野田首相と懇談するなど日本に対して異例の配慮を見せた。ある外務省幹部は「中国は何とかして日本とASEANを引き入れようと色々と考えている。中国にとって日本の価値が飛躍的に上がっている」と話している。

 経済連携と安全保障の両面にわたってアメリカと中国が主導権争いを続ける中、野田首相はアメリカがアジア太平洋地域で存在感を示すことを支持した。

 アメリカと中国の思惑が交錯する中、日米同盟を機軸としつつ中国との互恵関係も深化させたい野田首相には今後、バランスの取れたしたたかな外交手腕が求められる。