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軍政から民政に移行、ミャンマーのいま

2011年10月1日 22:09

 東南アジアの仏教国・ミャンマー。20年以上にわたって軍が政権を握り、民主化勢力を弾圧してきたが、総選挙を経て今年3月に大統領を国家元首とする「民政」に移行した。新政権は、民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チーさんと話し合いを始めるなど、変化の兆しが見え始めている。

 ミャンマーの最大都市・ヤンゴンの路上で売られているいくつかの新聞の一面にスー・チーさんの写真が掲載されている。軍政の下、去年まで7年半軟禁されていたスー・チーさんが紙面に載ることなど軍政時代は考えられなかったという。また、反政府活動にインターネットを利用されることを恐れた軍政は、チャットや動画サイトの利用をきびしく規制していたが、今ではネットでスー・チーさんの演説動画を見ることができる。

 雑誌やネットの規制緩和が顕著に見られるようになったのは8月下旬以降で、新政権のテイン・セイン大統領がスー・チーさんと就任後初めて会談した時期と重なる。地元の雑誌記者は「政府は新しい方針を出そうとしている。メディアもより自由になるだろう」と述べ、一連の動きを新政権による「改革の兆し」と期待している。

 一方で、政府の姿勢に懐疑的な目を向ける人もいる。ヤンゴン在住の元ヒップホップミージシャン、ザヤトーさんは、民主化活動に参加したため、今年春まで3年間、政治犯として投獄されていた。釈放後の8月にはチャリティーコンサートを企画したが、ザヤトーさんだけが当局から参加を許可されなかった。

 ザヤトーさん「普通の生活を送りたいだけです。君たちのように、自分が思うことを自由にやりたい。『変化があった』と言う人は多い。でも、私はそうは思いません。これは本当の変化ではない」

 民主化運動のシンボルであるスー・チーさんは、今の状況をどのように感じているのだろうか。本人がNNNの取材に応じた。

 スー・チーさん「より多くの若者が政治・社会に関与するようになりました。これは大きな変化です。希望を実現するためには待っているだけではいけません。実現に向けて懸命に取り組むことが大切なのです」

 新政権が打ち出す「ソフト路線」には、民主化への取り組みを国際社会にアピールする狙いがあるとみられている。しかし、急激に民主化を進めると新政権にとって、自らの足をすくわれる事態にもなりかねない。改革に対してどこまで本気なのか。スー・チーさんたち民主化勢力は政権側の姿勢を見定めながら、政治犯の釈放などを求めて政権との駆け引きを続けている。