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最新旅客機・ボーイング787の実力とは?

2011年8月24日 16:15
最新旅客機・ボーイング787の実力とは?

 まもなくデビューする最新鋭の旅客機「ボーイング787」。日本の技術で、これまでにない快適性を実現したというその秘密をアメリカ・ロサンゼルス支局・加藤高太郎記者が取材した。

 アメリカ西海岸、シアトル郊外にあるボーイング社の工場で8月6日、世界が注目する旅客機が報道陣にお披露目された。姿を現したのは、次世代の主力機として期待されているボーイング787の全日空第1号機。愛称は「ドリームライナー」、世界のどこよりも早く全日空に納入されることになっている機体だ。

 ボーイング787は、座席数が200から300ほどの中型旅客機で、燃料費が高騰する中、これまでより燃費を2割向上させたことが大きなセールスポイント。部品の35パーセントに日本製を使い、機体の軽量化と強度アップを実現している。当初の予定から3年も遅れてのデビューとなったが、ボーイング社にとってはまさに社運をかけた旅客機となる。会見で、ボーイング社のスコット・フランチャー副社長は、「787はボーイング社にとって、非常に長く、挑戦的な道のりでした。とても興奮しています。今日はボーイングにとって素晴らしい日です。全日空にとっても同じだと思いますよ」と、語ると、同席した全日本空輸の森本光雄副社長も「ええ、とても興奮しています」と、応えた。

 今回、初めてボーイング787の客室内が公開された。内部は、明るく、天井も高いため、開放的な印象だ。機体の強度が増したことで、客室を広くすることができたという。また、3割ほど大きくなった窓には、新しい機能も付いた。通常、窓から入る光を遮るためには、シャッターを使っていたが、新型機ではボタン操作による電子制御で明るさの調整を行う。さらに照明には、LED(発光ダイオード)を使い、色合いを変えることもできる。

 また、女性にうれしいのが「加湿器」がついたことだ。これまでは機体がさびる恐れがあったため使用できなかったが、炭素繊維などを採用することで、導入することができるようになった。加湿器の設置について、客室乗務員は、「機内は乾燥するので、それが改善できるので、お客様に快適に過ごしてもらえると思う」「(客室乗務員にとっても)お肌の乾燥を防げるのでうれしいです」と笑顔で語る。さらに、ボーイング787にはトイレにも秘密があった。内部には窓がついており、便器には温水洗浄機までついた特別設計になっていた。

 最新鋭機ならではの快適性を実現したボーイング787。その機体を送り出すのが、世界最大の容積を持つという最終組み立て工場だ。そこでは、巨大な工場の中で、ボーイング787が一度に4機も、流れ作業で組み立てられている。機体は、それぞれの航空会社の仕様に合わせてオーダーメイドで作られる。寄せられた注文はすでに800機以上というヒットぶりだ。基本価格は日本円で一機あたり約150億円だという。

 ボーイング787は7月、試験飛行で初めて日本に飛来した。中型機でありながら、燃費を向上させることによって、大型機でなければ無理だった長い距離の飛行が可能になった。これにより、今までは収益が見込めなかった路線でも、新規開設される可能性が出てきた。55機を導入する予定の全日空にとっては、今後の戦略を担う重要な旅客機となる。全日本空輸の森本光雄副社長は、「性能面では羽田からアメリカ東海岸、ヨーロッパにも飛べる性能を持っている」「国際戦略機として使っていきたい」と抱負を語る。

 この1号機は、ボーイング社から全日空に引き渡された後、10月下旬にボーイング787による世界初の営業飛行として成田から香港へのチャーター便として運航される予定だ。日本の技術が詰まったボーイング787が、まもなく世界の空へと羽ばたいていく。