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福島から避難も、再出発果たしたパン職人

2011年4月24日 7:27
福島から避難も、再出発果たしたパン職人

 福島第一原子力発電所の半径20キロ圏内、いわゆる「警戒区域」に設定されている福島・楢葉町から避難し、新たな地で再出発を果たしたパン職人の男性を取材した。

 楢葉町から避難してきた八橋真樹さん(39)は、現地で「アルジャーノン」というパン店を10年前から営んでいたが、東日本大震災の翌日に父・真一さん(73)と母・幸子さん(72)と一緒に車で避難した。その後、避難先を転々とし、現在住んでいる埼玉・川口市のアパートは5か所目の避難先となっている。

 八橋さんは避難と同時に店を閉じ、現在は700万円の借金が残っている。そんな八橋さんに、東京・杉並区でパン店「リスドォル・ミツ」を経営する廣瀬満雄さん(60)が「自分の店で働かないか」と声をかけた。2人は7年前にパンの講習会で知り合い、廣瀬さんは震災以来、八橋さんの安否を気遣っていたが、知人を通して八橋さんが関東に避難していることを知ったという。八橋さんは「またパンを作れるなら」と再スタートを決意した。

 勤務初日となった18日、八橋さんは約1か月ぶりの作業着に引き締まった表情を見せていた。久しぶりの生地の感触に最初は少し戸惑った様子だったが、徐々に感触を取り戻した。八橋さんは「(Qパンを作る時、何を思った?)やっぱり自分の店のことを思い出しました。何もなかったら、普通にやっていたわけですから。また修行のつもりで頑張りたいです」と話す。

 「いつかはまた自分の店を開きたい」-八橋さんの再出発は始まったばかりだ。