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原発キーワード「レベル7」

2011年4月12日 23:59
原発キーワード「レベル7」

 原子力発電所に関する報道、水や食物などへの影響に関する報道の中で、わかりにくい言葉や気になる情報を毎回1つピックアップし、日本テレビ報道局の担当記者が解説する「原発キーワード」。12日は、「レベル7」について原発事故取材班・小野高弘デスクが解説する。

 福島第一原子力発電所の事故について、経産省の原子力安全・保安院は12日、事故の深刻度を表す評価を最も深刻な「レベル7」に引き上げると発表した。基準以上の放射性物質が放出していることを受けたもので、「レベル7」は旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故と並ぶ評価で、世界で2例目となる。

 国際機関が定めた基準では、原発事故が起きた際、どのぐらい深刻であるかをレベル0から7で評価する。この基準に照らし合わせ、どのレベルにあるかは、事故が起きた国の機関が評価して国際機関に報告する。

 大きな事故では「大気に放出された放射性物質の量」が重要な判断基準になるが、「レベル7」とされるには「数万テラベクレル」が国際基準となる。内閣府の原子力安全委員会の試算では、今回の福島第一原発の事故で既に63万テラベクレルの放射性物質が放出されているという。

 今回の福島第一原発の事故とチェルノブイリ原発の事故を比較すると、チェルノブイリ事故では520万テラベクレルの放射性物質が放出されている。被ばくによる死亡者は、チェルノブイリ事故は作業員や消防隊員ら計約30人、福島第一原発の事故は0人。

 約100ミリシーベルト以上の高い放射線量に被ばくした作業員は、チェルノブイリ事故が24万人、福島第一原発の事故が21人。しかし、100ミリシーベルトは健康に影響がある値ではないとされていて、保安院は「作業にあたる人の放射線量は管理されている」としている。また、チェルノブイリ事故では、原子炉自体が爆発して世界的な汚染につながったが、福島第一原発では原子炉は一部で壊れているとみられていて、そこから放射性物質が漏れているという状況だ。

 こうして見ると、同じ「レベル7」でもチェルノブイリ事故と今回の福島第一原発の事故は「全く違う状況」と言える。「レベル7」という言葉だけが一人歩きするのは良くないことだが、決して安心できる状況ではなく、深刻な事態が続いていることに間違いない。