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内陸でも…千葉県に広がる液状化現象の被害

2011年3月30日 23:41
内陸でも…千葉県に広がる液状化現象の被害

 東日本大震災で、千葉県の浦安市や幕張など埋め立て地を襲った液状化現象の影響が広がっている。液状化現象は海岸地域だけでなく、我孫子市や市川市など千葉県の内陸でも起きていた。被害は首都圏の米どころや観光地にも及び、人々の生活に影を落としそうだ。

 東日本大震災発生直後、千葉市美浜区で起きた液状化現象で、アスファルトはまるで呼吸するかのように盛り上がり、建物と地面はいとも簡単に引きはがされた。そして、泥水が噴き出し、千葉県湾岸の新しい町並みを一変させた。

 地震発生からまもなく3週間となるが、この影響は広がりつつある。船橋市のふなばし三番瀬海浜公園は、あちこちで地面が割れ、現在は閉鎖に追い込まれている。また、東京湾に面した浜辺は、都心から一番近い潮干狩りの場として人気で、去年は15万人が訪れた。しかし、今は浜辺にいくつもの段差ができ、安全が確保できないとして、中止せざるを得ないという。公園のプールも底が浮き上がり、水が漏れ出していた。この夏の開園は厳しい状況で、公園が再び市民に開放される日は全くメドが立っていない。

 千葉県各地で起きた液状化現象による被害は、海岸沿いだけではなく、内陸にある我孫子市でも起きていた。市内の「村田酒店」では、店の床がまるで土俵のように盛り上がり、店全体が床の中心だけを残して沈み込んだ。この店の隣近所の多くの家でも、風呂場に土砂が流れ込んだり、土砂が畳を持ち上げたりするなどの被害を受けていた。住み慣れた我が家を離れ、親戚の元などに身を寄せる人も多いという。

 なぜ、内陸の我孫子市にも液状化現象が起きたのか。その理由は市の北部を流れる利根川。液状化は、川沿いの沼地を埋め立てた場所で起きていた。今回の震災により、千葉県で液状化が確認されたのは湾岸地域だけでなく、利根川流域の市や町にまで広がっていて、その多くが埋め立て地だった。我孫子市は117世帯が全壊した。

 利根川沿いの液状化は、首都圏の食卓をも直撃する事態になっている。香取市の水田地帯は関東有数の生産量を誇る米どころだが、川沿いに張り巡らされた田んぼは、液状化によって砂に覆われ、耕運機が入れない。また、地下にある用水用のパイプがあちこちで破損し、一帯の田んぼに水が送れない状況だという。被害は市内の3分の1の水田2500ヘクタール、損害は28億円に上る。震災がなければ、あと1か月もすれば田植えの季節だが、今年は苗作りすらできない。

 香取市の市街地にも液状化の被害は広がっていた。江戸時代から続く水路と町並みで多くの観光客が訪れる地区では、川底がせり上がって船が乗り上げた状態になっている。底が約1メートル持ち上がり、水に浮いていた船を押し上げたという。この地区は年間50万人が訪れる観光地だが、今はひっそりとしている。桜祭りなどイベントが次々と中止になり、客を呼び込む手だてがない。被災した多くの飲食店は、訪れる観光客に楽しんでもらえるようにと復興を目指している。香取市は、9万人の観光客が訪れる6月の「あやめ祭り」はなんとか開催し、市民に希望を持ってもらいたいという。

 しかし、液状化の被害からの復興は生易しいものではない。香取市内では、仮設の水道管の設置が進んでいるが、下水道が復旧しないため、現在も2000世帯が断水を余儀なくされている。仮設トイレは設置されているが、1人暮らしの高齢者も多く、健康状態が心配される。また、大きく傾いて倒壊のおそれがある家には、危険を知らせる赤い紙が貼られていた。香取市では、住むのが危険と判断された家が1000軒以上に上る。香取市は仮設住宅や公営住宅の入居希望者を募っているが、住み慣れた我が家を去りがたい人もいる。

 首都圏の被災地でも、苦しみと頑張りが続いている。