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ロスで大ブーム、フードトラック

2011年3月9日 20:52
ロスで大ブーム、フードトラック

 ランチタイムになると路上に現れるカラフルなトラック。様々な国のファストフードを販売するフードトラックが今、ロサンゼルスでブームとなっている。

 売られているイタリアンサンドイッチは、モッツアレラチーズとプロシュート(生ハム)が入り、ドライトマトの酸味が美味しいと評判。珍しいモロッコ料理も置いてあり、こちらでは、郷土料理の肉と野菜を包んだ食べ物を売っている。スパイシーで肉の旨みがよく出ていて、モロッコ料理が初めての人でもおいしく食べられる。

 一方、路上ではなく他の店の駐車場で営業するトラックもある。アメリカの人気家庭料理、マカロニチーズのサンドウィッチを販売しているお店はこの日、カップケーキ屋の駐車場で営業していた。サンドウィッチを買ったお客さんの間では、「おすすめだよ」と大評判。人気のあるフードトラックは、他の店からお呼びがかかるらしい。お店の人が、「マカロニチーズサンドを食べに来た人がカップケーキも買い、カップケーキを買いに来た人がサンドも食べる。私たち双方にメリットがありますよ」と話してくれた。

 また、いろいろな食べものが並んでいる中には、赤ちょうちんをぶら下げたラーメン屋もある。去年春から営業を始めた臼井さんは、ランチとディナーの時間に、毎日、違う場所で営業をしている。トラックの中を見ると本格的な厨房があった。臼井さんいわく、「日本のような屋台は保健所に認められない」ということが、きちんとした厨房を設置した理由。「なぜトラック営業を始めたのか?」という質問には、「以前、レストランをやっていたんですけど、お客さんの所に自分から行けるというのが非常に面白かった」からだと答えてくれた。

 そして、このフードトラックではたこ焼きも売られている。大阪出身の柴谷さんもトラックの機動性に魅力を感じ、去年からこの仕事を始めた。「アメリカ人になじみのない料理は店に来てもらえないので、自分から出向いて行って話題を作った。パフォーマンスはインパクトがあるので」と教えてくれた。たこ焼きを初めて買ったアメリカ人は、「初めて見たよ。塩味に甘みがあっていいねえ。おいしいよ」と大満足な様子。「もう一度、ここに来ますか?」という問いに対し、「もちろん。来週同じ時間にね」と笑顔で答えてくれた。

 取材した中でわかったことは、フードトラックブームの背景には2つの鍵があるということ。ひとつは景気の低迷。購入者は景気が悪いと、安くて美味しいホッとする食べ物に引き寄せられるらしい。また、事業者の方でも、フードトラックならレストランと違い、費用をあまりかけずに始めることができることも大きな要因のようだ。そしてもうひとつの鍵は、ツイッターなどのインターネットサービスの普及。「お目当てのトラックがどこにいるのかはツイッターなどでわかるわ。フォローするだけ。今、ここにいるよ、営業しているよ、発信しているのよ」とお客さんが言っている。もともと、ロサンゼルスにはメキシコ系移民が多いため、郷土料理タコスを格安で販売するトラックがたくさんあった。2年前、ある事業者が韓国焼き肉のカルビを挟んだタコスをトラックで販売した。その様子をツイッターで場所と時間をお客さんに伝えたところ、大ヒットとなった。それ以降、同様のスタイルのトラックが次々と現れたということだ。

 柴谷さんは、「ツイッターがあるからこれだけトラックが広がったと思います。みんな昼前にスマートフォンでツイッターを見て、今日、来てるなら、じゃあ行こうと。新しいタイプのビジネスだと思う」と熱く話してくれた。

 バラエティに富んだ食べ物を気軽に安く食べられるフードトラック。ブームだけに終わらず、ロサンゼルス市民の食生活に定着しつつあるようだ。