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人工的に気温を下げる「地球工学」とは

2010年12月4日 20:33

 地球温暖化に歯止めをかけようと、メキシコでは気候変動枠組み条約第16回締約国会議(=COP16)が開かれている。しかし、温室効果ガスの削減目標について、議論がまとまらないのが実情だ。そこで、アメリカでは、「ジオエンジニアリング(地球工学)」と呼ばれる新技術を提案する科学者も登場している。

 相次ぐハリケーンなどの異常気象や日本の猛暑は、温暖化が原因の一つとされている。国連の機関は先週、今年の世界の平均気温が観測史上最高になる可能性を指摘。気温が約2℃上がれば、最大30%の種が絶滅すると懸念されている。

 こうした中、一向に進まない温室効果ガス削減の議論に業を煮やした科学者らが、地球の温度を人工的に下げる方法を検討し始めた。「マイクロソフト」出身の技術者が考えたジオエンジニアリングは、高度30キロの成層圏まで飛行船を使ってホースを通し、二酸化硫黄の微粒子をまいて太陽の光を遮断するというものだ。

 ニュージャージー州にあるラトガース大学では、実際に微粒子を散布した場合、気温にどのくらいの影響があるのか、NASA(=米航空宇宙局)のデータを使って解析した。研究員によると、年間500万トンの二酸化硫黄を散布すれば、世界の気温を0.5℃下げられるとしている。

 一方で、気候学者のアラン・ロボック教授が「人工的に『雲』をつくるには、飛行機で微粒子を散布したり、飛行船を使ったり、塔を建てたりする方法があります。年間数千億円の費用でできます。しかし、リスクもある。(農作物の不作など)負の側面があるでしょう」と話すなど、人工的に地球の温度を下げられても、温室効果ガスの排出が増えれば、効果は打ち消されると危惧(きぐ)する研究者もいる。

 急速に進む温暖化に対し、リスクのある手段を検討するほど、科学者の間では危機感が高まっている。