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多くの韓国人を魅了する「朝鮮人参祭り」

2010年9月15日 15:04
多くの韓国人を魅了する「朝鮮人参祭り」

 この夏、韓国では、収穫されたばかりの朝鮮人参(にんじん)を求めて、約75万人が年に1度の「朝鮮人参祭り」につめかけた。そのようすをソウル支局・永廣陽子記者が取材した。

 「韓国人にとって、一番いい薬だと聞きました」「健康に最高でしょう」「最高、最高」…街頭でインタビューをすると、韓国の人々が口をそろえてほめそやす朝鮮人参。疲労回復などに効果があるとされ、料理に使ったり、酒やお茶にして飲んだりと古くから親しまれてきた。

 この時期、その朝鮮人参を求めて多くのファンが集まるのが、ソウルから約200キロ離れた韓国中部の町、錦山(クムサン)。人参畑が広がる錦山には専門の市場があり、国内で流通する朝鮮人参の約8割を取り扱っている。市場の男性に話を聞くと、「人参は人の形をしたものが良いんだよ。私が食べるかって?毎日食べるよ。毎日、毎日」と笑顔で語る。夏の収穫期を終えた今が、一番味が良いとのことだ。

 レジの前では「並んで下さい、こっちに並んで下さい」と威勢のいい声が聞こえてくる。この市場では畑で栽培したものを1本100円から1000円ほどで販売している。店頭で買うよりは約3割安いというが、野山に自生している天然の人参は、時に数百万円の値がつくこともあるという。その高級なイメージから、贈り物としても人気があり、日本の旧盆にあたる秋夕(チュソク)を前に、市場は大盛況のようだ。お客さんに話を聞くと、「贈り物としては最高です。もらう人も最高に喜ぶ」「肌にいいし、私はよく食べるの。65歳なのに肌がきれいでしょ」と、多くの人が朝鮮人参の魅力を語ってくれる。

 収穫まで最低でも4年かかるという朝鮮人参。芋掘りならぬ“人参掘り”は産地ならではのイベントだ。人参のヒゲを切らないように掘るのがコツだという。「あーいいね。いいね、いいね」「ものすごく大きい、これ」…人参掘りを楽しむ人たちからも歓声があがる。そして、人参掘りに疲れたら、人参の足湯でリフレッシュ。独特の香りに包まれ、気分もすっきりできる。

 会場では、朝鮮人参を使った料理大会も開かれた。ほろ苦い味と香りをいかすのがポイントのようだ。韓国料理だけでなく、日本風の手巻き寿司や洋風のステーキも並ぶ。人参ステーキの考案者は「どうやって人参を世界に広く知らせるかを考えました」とそのコンセプトを語ってくれた。健康ブームの影響もあり、朝鮮人参の韓国内での消費量は増加し、さらに輸出の量も急増している。これまでは主に医薬品扱いだったため制限があったが、2009年、国連機関の委員会で食品として認められた。韓国政府は、輸出の拡大にさらに力を入れたいと話す。

 韓国人が愛してやまない朝鮮人参。今年は、10日間で約75万人が「朝鮮人参祭り」につめかけた。市場の店の女性は「私たちもプライドを持って商売をしています。品物が多彩で安い。だからたくさん遊びに来て愛用してください」と笑顔で語る。朝鮮人参の国外へ向けたアピールはまだまだ始まったばかりだ。