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原爆の授業、被爆体験語り継ぐ 米国

2010年5月15日 22:32
原爆の授業、被爆体験語り継ぐ 米国

 アメリカ・ニューヨークで、5年に一度のNPT(=核拡散防止条約)の再検討会議が開かれている。この機会に原爆について学ぼうとマンハッタンの学校で行われた取り組みを取材した。

 「核兵器がこの世からなくなるのを見届けなければ、安心して死ねません」-核兵器のない世界を目指すためのNPT再検討会議。日本の被爆者も加わって「核のない世界」の実現を訴えたが、原爆の悲惨さを知る被爆者は高齢化が進んでいる。

 このような中、マンハッタンの私立セント・ルークス校で原爆をテーマにした授業が行われ、長崎への原爆投下を描いた日本のアニメ映画「NAGASAKI・1945~アンゼラスの鐘~」が上映された。アメリカでは多くの教科書が「原爆が戦争を早く終わらせた」と教える中、こうした授業は極めて珍しい取り組み。

 「実感がわかないな」などと、初めて教わる被爆に戸惑う生徒の姿も見られた。しかし、続いて行われた議論は次第に白熱していった。

 生徒「原爆が落とされたことは知っていたけれど、重傷を負った人の苦しみとか細かいことは知らなかった」

 教師「アメリカ人も、広島や長崎についてもっと学ぶべきかしら」

 生徒「そう思います」

 この後、生徒たちは被爆者・児玉三智子さん(72)の体験に耳を傾けた。写真を見せながら、「これが、原子雲ともキノコ雲ともいわれている雲です。私はこの雲の下にいました。窓ガラスが鋭利に飛び散り、壁、床、机、私に突き刺さりました」と語った児玉さん。初めて聞く被爆者の生の声を、生徒たちは真剣なまなざしで聞いていた。

 「つらい体験を乗り越えて語り継ごうという思いなんですね」-生徒は児玉さんの話から多くを感じ取ったようだが、こうした授業を行う学校はごくわずかだ。原爆の記憶が薄れる中、核兵器の恐ろしさをどうしたら語り継げるのかが、NPT再検討会議でも緊急の課題となっている。