×

IAEA「核の鑑識」の現場、記者が取材

2010年2月13日 20:58
IAEA「核の鑑識」の現場、記者が取材

 核兵器の開発を疑われるイランは今週、国際社会の反対を押し切る形で、高濃縮ウランの製造を宣言した。濃度を高めれば核爆弾の原料にもなるウランなどの扱いに監視の目を光らせるのが国際原子力機関(=IAEA)だ。岩崎建記者が、闇の核開発を突き止める、IAEAの心臓部で「核の鑑識」と呼ばれる「clean lab(クリーン・ラボ)」を取材した。

 クリーン・ラボは、IAEA本部のあるオーストリア・ウィーンから車で約1時間の所にあるサイバースドルフ研究所に設置されている。秘密裏に核開発をしている加盟国がないかを調べる、いわば「核の鑑識」部門だ。

 核兵器の材料となるウランやプルトニウムを元素単位で探し出すため、ガラスの向こうはその名の通り極めて清潔に保たれていて、施設に入るには、まずエアシャワーを通って体の汚れを落とさなければならない。IAEA保障措置局・篠永妙子分析官は「(ラボの中では)人間がゴミですから、ラボを汚染しないように細心の注意を払っています」と話す。

 ここで分析されるのは、各地の核関連施設で査察官が採取してきた物質で、プルトニウムなら1フェトム(10のマイナス15乗)グラムという微量まで検出が可能だ。

 イランが今週、高濃縮ウランの製造を宣言し、緊張が高まっているが、天野之弥事務局長は、より精度の高いウラン分析装置を年内に導入することを決めた。

 また、IAEAは「核の番人」という側面のほかに、核の平和利用も推進している。ある研究室では、主に途上国の食糧支援のために、バナナや米などの品種改良をしていて、塩水でも育つイネなどすでに3000以上の新種を開発している。

 幅広い分野での平和利用が進む一方で、それを口実に核爆弾製造のノウハウを手に入れようとする動きは後を絶たない。善と悪、両方の顔を持つ「核」をどうコントロールしていくのか、IAEAの担う役割はさらに重くなっている。