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韓国・ソウルに本格日本料理学校が誕生

2010年1月12日 15:00
韓国・ソウルに本格日本料理学校が誕生

 日本食ブームの韓国で、本当の日本料理を作れる料理人を育てようという学校が誕生。そこで学ぶ韓国人の生徒を取材した。

 ソウルでは、日本風の居酒屋が韓国人の客でにぎわっており、日本食を表す「日式」と書かれた料理店の看板もよく見かける。だが、ある店で刺し身を注文してみると、しょうゆではなく、韓国人の味覚に合ったニンニク入りの辛子みそダレが出てくるなど、韓国で本当の日本料理を味わえるのは、一部の高級店というのが実情だ。

 しかし、旅行や仕事などで日本を訪れたことのあるグルメな韓国人の間では、本場の味を求める志向が高まっている。そこで、「本当の日本料理の職人を育てよう」と09年9月、福岡市の中村調理製菓専門学校が分校としてつくった「ナカムラアカデミー」がソウルに誕生した。中村調理製菓専門学校・中村哲理事長は「日本は少子化で専門学校だけに限らず、大学も入学者の減少に悩んでいる。韓国では日本料理を学びたいというニーズがすごく大きい」と、進出の背景に学校業界の厳しい現状があると語る。費用は約60万円で、生徒にとっては、日本に料理留学するよりは費用面や語学などの負担が軽いというのも魅力だ。

 アカデミーの1期生は23人。日本から派遣された講師が和包丁の研ぎ方から基本を教える。日本語がわからなくても、通訳がいるので言葉の問題はない。生徒たちは、半年にわたって「懐石料理」をはじめ、「すし」や「うどん」など多彩なメニューを習う。実習では、日本の有名料亭などの料理人が特別講師となることもあるという。

 生徒の一人、チャン・ソンシクさん(42)は、サラリーマン時代に日本に出張した際、本場のすし職人にあこがれ、08年4月、ソウルにすし店を開いた。日本料理を本格的に学んだことはほとんどないというチャンさんは、最近、日本で本場のすしを味わった客が増えたと感じ、客が求めるレベルに追いつけなければ生き残りは難しいと考え、入学したという。ある日は、福岡県でこの道50年のすし職人・山中啄生さんから「飾り付け」や「しゃりの握り方」など貴重な教えを受けた。

 「アカデミーで学んだことを基礎に、自分自身をレベルアップしたい」と語るチャンさん。本物の味で客を楽しませる日もそう遠くないのかもしれない。